14漆黒短いものまとめ「きらめきからめをはなせない」
水晶公初対面とヒカセン
初めて彼の姿を見たとき、記憶の中の人物と無意識のうちに重ねてしまった。そして、そうであればいいと思いながら投げ掛けた問いに彼はあっさり否と返してきた。そうだろうな、と思いつつもやはり少しだけ残念な気持ちは隠せなかった。彼に『また』あえたらたくさん話したいことがあったのに。
それでもどことなく彼に似た姿の彼──水晶公に親しみを覚えてしまうのは仕方ないだろう。
だからだろうか、彼に名前を呼ばれるのは悪くなかった。そして、彼が向けてくる信頼に少しでも応えたいと思ってしまう。
たとえこの出会いが、いつかくる別れを迎えるための始まりだとしても。
脳裏にちらつく鮮烈な赤と銀が。
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