人生で一番幸せになった日 ーエピローグーベッドの上で見上げる快惺の顔は、なんだかいつもと違って見えた。こうして触れあえるのも久しぶりな気がする。聞けば、触れてしまったらせっかくのサプライズが我慢できなくなりそうだったから、とのこと。
触れられない間は、寂しくて、怖くて。でも知ってしまえばそれは全部泉の為だった。それまでの寂しさなんてあっという間に喜びに変わって、別れ話どころかプロポーズされたことがもうこのまま死んでもいいと思うくらい嬉しくて。
快惺の背に回そうと上げた左手の薬指に、しっかりと輝く指輪があることに知らず知らず笑みが零れる。
「……泉、オレのもの……なんだな」
ぎゅうっと抱きしめられるその力強さにすごく安心する。触れる素肌は暖かくて、鼓動のリズムが心地よくて。
蕩けるような笑顔で噛み締めるように呟く快惺に、泉も頷いた。
「そうだよ……全部、快惺さんにあげる。快惺さんも俺のもの、だよ。これからもずーっと」
「うん、そうだな。なんか……はじめての日、思い出すな。身体だけじゃなくて、泉の気持ちも欲しいって言ったけど……叶ったんだな、一生オレのものだ」
しみじみと言った快惺の唇が泉に重なる。快惺の匂い、快惺の味、快惺の温度。言葉通り、絶対に離さないと言わんばかりにぎゅうぎゅうと泉を抱きしめる大きな腕。
包み込まれる安心感と幸福で、涙腺がバカになったみたいだ。泉の意思と無関係にぼろぼろと溢れる涙。それを優しく拭うように、ちゅっちゅと何度もキスが降らされる。
「泣かないでよ泉…大好きだよ」
「うん……うん、俺も、大好き……快惺さん」
泣き笑いの泉に、再び唇が重なる。今度は深く深く。
心も体もぴったりと重なって、一つになっていく。今まで何度もしてきたのに、今まで感じてきた以上の幸福で満たされている。ずっと、ずっとこうしていたい。何回したって足りない。
「はやせさん、もう一回」
「うん」
「あっ、もっと……もっとぎゅってして」
「うん」
しっかりと抱きしめられた背に手を回して、快惺の首筋に、肩に、たくさんの痕を残して。
もう一回、もう一回……っ!
「泉、好きだ……愛してるよ」
「ん、うん、俺も……愛してる」
飽きることなく二人で求めあって、明け方近く。幸せに包まれたまま眠りについた。
目が覚めたら、隣にあるぬくもりにまた幸せを感じるんだろうな。
終