「たまには俺も甘えたい」
そう言ったのがすべての始まりだった。本当に、なんとなく。凪の濡れた髪を乾かしてやって、変に捲れ上がっていたスウェットの襟元を直してやって。これで、寝る準備ができたな! って頭を撫でたときに、ふと自分も同じように甘やかされたいと思ったのだ。
「急にどうしたの、レオ」
「いや、俺もお前みたいに甘やかされてーって思って」
「甘やかされたいって、たとえば……?」
「んー、そうだな……。あ、じゃあ、試しに俺の髪を乾かせ!」
名案だとばかりに頷き、持っていたドライヤーを凪に手渡す。てっきり面倒くさいって一蹴されるかと思ったが、凪は文句を言うことなくドライヤーを受け取ってくれた。「じゃあ、レオが下に座って」と凪がフローリングを指差す。言われた通り下におりれば、逆に凪がソファに上がっていった。
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