ワンカップ酒まだ上手く身体の動かない俺に無理せず家にいるよう告げ、彼は扉の外に出て行った。こんな寒冷地に放り込まれた俺にとってここは限りなく平穏で優しい空間だった。ベッドから身体を起こしながら周囲を見渡しても使い古されたストーブ、色濃くなっているテーブル、金属の剥げた簡素な台所、道具を手入れするため薬剤の並ぶ机。ただそれだけしか無かった。せめて掃除でもできれば良かったのだがそんなものの必要のないほど全ては片付いていた。おぼつかない足取りで少しだけ歩くと、古びた布に隠されるようにして埃を被った小さな本棚を見つけた。タイトルは様々で野生の狩猟、解体、薬剤製造、そんなものばかりの中ひとつ目を引くものがあった。赤の鳥と黒の鳥の鳴き声と地獄。
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