ネタバレなし 仙楽太子的生辰 玄真殿に南陽将軍が訪ねて来た。
そこにはぴりりと緊張が走る。理由なら誰でも語らずしてわかるだろう。彼らは八百年来の犬猿の仲で、道路、柱、植木――生粋の武神たる彼らの激しすぎる喧嘩の末、犠牲になった物はいくつあるものか。 そしてその処理という仕事が誰にまわってきたのか。無論、それぞれの殿の小神官である。
それでもあの騒動の後からはまだその事態に発展していない。それどころか、彼らの喧嘩による騒音を誰もきいていないとの噂もある。しかし事実はどうあれ、小神官たちの骨身に刻まれた苦い記憶はそう簡単に上書きされないのだ。
「……南陽将軍、どのようなご用件でしょうか……?」
拱手を組み、その小神官は彼を見上げる。
5515