横断歩道白、黒、白、黒――
うだるような暑さの中、夏油はぼんやりと目の前の大通りを見つめていた。蝉たちの大合唱が頭の中で鳴り響き、耳鳴りと重なって酷く五月蠅い。
眼を閉じると、灰原の遺体を目の前にしたあの瞬間が鮮明に蘇る。何のためにこんなことをしているのか、自分たちの命を賭して守るべきものは何か。見知らぬ他人のために命を落とす仲間達を、自分はあと何人見送ればいいのか。
違う、ダメだ。そうじゃない。非術師を守るために私達術師は存在している。呪術を持つものとして、当然の義務だ。
――本当に? 本当にそうなのか。じゃあ私達術師は、誰が守ってくれる?
――――違う、チガウ、[弱者生存]それがあるべき社会の姿だ。弱きを助け、強きを挫く。それが呪術師だろう。迷うな、ブレるな。
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