ナターレ しっかり晩ご飯を食べたのに、夜も更けてから嘘みたいに空腹感を覚えてしまい、どうしようか迷っていると近くの部屋のドアが開いた音がした。
お腹が空くからって一人でキッチンまで行くのは少しためらうけど、誰かと一緒ならという思いで追いかけるように俺も部屋を出たところで、階段の方へ向かう途中のアーサーが振り向いて目が合う。
「賢者様! どうなさったんですか?」
「ええと……実は、」
かくかくしかじか、恥ずかしながら話すと、アーサーは困り笑いを浮かべて「私もです」と言った。
「不思議です。夕食の直後は、確かにもう食べられないと思ったのに……」
「そうなんですよね! 俺もそんなかんじで……よかったです、自分だけじゃなくて」
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