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    Caged_00

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    好きだよとは言えなかったけれど。
    好きだよとは言わなかったけれど。
    あの日確かに、閂終司は恋をしていた。
    同情から始まったそれは、誰にも知られないところで花開き、そしてひっそりと散っていった。



    折り入って、二人だけで話がある。
    監視の必要は無くなったが、引っ越すのも面倒だし、何より美味い飯が捨て難くて居着いたままのマンションの階違い。己の真上の部屋のダイニングで、閂終司は不意に、真剣な眼をした成海夏織にそう言われた。
    「別に、いますればいいんじゃねぇの?」
    昼下がりの時間帯、この部屋の主である星埜七生は通院のため不在だ。二人きりなのだから、畏まらずとも切り出せばいいのに。夏織も大概、妙なところが律儀だ。
    「いますぐだと、オレの心の準備がまだなんだけど。……まあいいや。じゃあいま言うか」
    いいのか悪いのかどっちなんだ、というツッコミは置いておくとして、なにか言いたげな夏織は、大きく深呼吸すると、終司に向き合って、
    「終司は、七生のことどう思ってる?」
    などと訊ねてきた。
    「どう……って、ナナは親友だけど。そりゃまあ、親友にするには度が過ぎたこともしてきたけど……」
    「七生には言わないから、オレには嘘はつかないで欲しい」
    どうやら夏織は納得がいかないようで、終司をまっすぐにじっと見据えている。自分は平気で嘘をつくくせに、他人には正直さを強要するのは如何なものか。そう思ったが、言葉にはしなかった。
    「お前がなにを不安に思ってるのかはわかんねえけど、俺はナナのことは親友以上には見てないよ」
    「嘘は言うなって言った」
    「お前のその疑り深さはなんなの…」
    どうやら夏織は、どうあっても終司から本音を引きずりだしたいようだ。
    こうなった時の夏織の厄介さは、七生の次によく知っている。こうなったら、本音を告げねば夏織は満足しない。夏織は自分が無意識に嘘を重ねてきたせいか、他人の嘘には敏感だ。
    「恋人にあんなことされたら、疑り深くもなるだろ」
    「あー、まあね。確かにね。……ナナのあれは発作みたいなもんだから許してやって」
    「まあそれは、済んだことだしもういいんだけどさ。元々疑り深い性格だし」
    疑り深さが天元突破して、諦めの境地にいたような男だ。
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