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    C7lE1o

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    C7lE1o

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    ・体の一部に花を宿して顕現する本丸
    ・主は大きな木
    ・気に入ってる設定と話ではあるが放置期間がそろそろ6年になるので尻たたき

    #本丸
    honmaru
    #長曽祢虎徹
    NagasoneKotetsu
    #歌仙兼定
    singingFairy
    #和泉守兼定
    mamoruKazumi
    #堀川国広
    kunihiroHorikawa
    #へし切長谷部
    heshikiriHasebe
    #不動行光
    āryācalanātha
    #鶴丸国永
    kuninagaTsurumaru
    #秋田藤四郎
    akitaFujishiro

    花宿り本丸最初にその目に飛び込んできたのは、顔の半分が美しい花で覆われた青年だった。

    「やあ、ようこそ我が本丸へ」

    主の元へ案内しよう。
    そう言って連れて行かれたのは開けた春の庭の先。

    「主、新しい刀剣が顕現したよ」

    さあ、主に挨拶を。
    背中を押され、一歩踏み出す。青年が主と呼びかけたのは、柔らかな陽光に照らされた大きな桜の木だった。














    この本丸の刀剣男士は、その身に花を宿して顕現する。
    時の政府はこの現象を「木が審神者を務める弊害」の「病」と位置づけているらしいが、詳しい事は何も分かっていないそうだ。
    審神者である【木】も不思議なもので、どういった種類か、どんな花を咲かせるか、いつからそこにあるのかさえも誰にも分からないのだとか。

    政府の命名は「開花症候群」。しかしこちらより別名の「花宿り」という呼び名のが好きなのだと彼は言う。

    「『開花症候群』なんていかにも病な名前より、『花宿り』のほうが雅だからね。…失礼。僕は歌仙兼定。主の初期刀にして、風流を愛する文系名刀さ。どうぞよろしく」

    歌仙の左目に揺れる牡丹に気を取られ、生返事をしてしまったおれに歌仙はこれかい、と先程の説明をしてくれた。
    政府は分かっていない、と言ったが、当の自分達もあまりよく分かっていないのだとも。

    「この本丸に顕現したからには、君にも花が宿る筈だよ。何、以前会った他の本丸の者には『片方の目が見えないなんて不便だろう』と言われたが、案外そうでもないからね。左目が機能しない変わりに耳が良く聞こえるし、何より雅だろう?」 

    左目に宿る牡丹よろしく、その美しい顔を綻ばせながら歌仙はそう言った。









    「長曽祢さんはどんな花が好きですか」

    縁側でぼんやり座っていると、後ろからはずんだ声が聞こえてきた。
    振り向く前にトン、と隣に座る影。ふわふわの桃色の髪が視界に入った。

    「花か。おれは花に詳しくないからなあ」

    「そうなんですね!でも大丈夫です!僕、花の図鑑を持ってきました!一緒に見ましょう!」

    言うな否や、おれの膝に乗っかかり、その小さな身体ほどもありそうな大きな本を開く。
    どことなく危なっかしく感じ、秋田の手の上から本を握った。
    気づいた秋田が顔を上げ、ありがとうございます、と眩しい笑顔をおれに向ける。
    その笑顔に何故か既視感を覚えながら、秋田に言われるがままページを繰った。



    「花には花言葉っていうのがあるんです!その日その日の誕生花っていうのもあるんですよ!例えばー…はい!10月9日!長曽祢さんの顕現した日の誕生花です!」

    見せられたページにあった花は『フェンネル』。小さな黄色い花だった。

    「『フェンネル』っていうのは異国の言葉で、日本語では『ウイキョウ』って言うんですって!料理にも使われるみたいですよ!」

    すごいですね!どんな味がするんでしょう、!と笑う秋田に一度食べてみたいな、と返しながら花言葉の欄に目を滑らせる。
    花言葉は『精神の強さ』『賞賛に値する』『強い意志』。

    「なんだか長曽祢さんにぴったりですね!」

    「そ、そうか?…そうだ、秋田の花はどんな花なんだ?」

    すこし照れく感じ、慌てて秋田の花に話をそらす。
    秋田の細い首を飾る、小さな黄色い花。
    スベリヒユというんです、と彼は言った。

    「『いつも元気』、『無邪気』っていう花言葉なんですって!」

    「なるほど、秋田にぴったりだな」

    桃色の頭を撫でると、秋田はえへへ、と嬉しそうに顔をほころばせた。

    「長曽袮さんに咲く花はどんな花なんでしょう!楽しみですね!」

    楽しそうに笑う秋田の頭を再び撫でながら、己に宿るであろう花に思いを馳せた。








    「見つけたぞぉ。お前が新入りだな」

    気まぐれに主を訪ねたおれに、ヒック、としゃくり混じりの声が投げかけられる。
    視線を上げると、長い紫の髪の少年が左手に甘酒を携えて主たる大木の枝に座っていた。

    「なんて言ったっけな。えーっと……」

    「長曽祢虎徹だ。お前は?」

    主に身を任せ両足をぶらぶらとばたつかせる少年に名前を問うと、少年はよくぞ聞いてくれたとばかりに勢いよくおれの前に飛び降りた。
    瓶の中の甘酒が危なっかしく揺れる。

    「俺は不動行光!不動明王と矜羯羅、制多迦が浮き彫りされてて、織田信長公がたいそう愛した逸品なんだ。どのくらいかというと、酔うと膝を叩いて歌って自慢するくらいだな。これって、相当のことだろう?」
    「織田信長か。それはすごいな」

    思ったことを率直に伝えると、不動は誇らしげに胸を張った。

    「不動行光、つくも髪、人には五郎左御座候、ってなあ!
    ……ん、そういや長曽祢ぇ、お前の花はどこにあんだ?」

    ズイ、と接近しおれの身体を見る不動に、おれにはまだ花が宿っていないことを伝えると、不動はふうん、と甘酒をすすりおれの腕を叩く。

    「ま、そのうち生えてくんだろ。……そうだ。俺の花を見せてやるよ」

    言い終わるや否や、不動はおれに甘酒の瓶を押し付け、勢い良く己の胸をはだけさせる。
    洋服の下にあったのは肌ではなく、幾つもの小さな花だった。


    紫苑、っていうんだと。秋田が言ってた。

    そっと胸の花に触れながら不動は言う。
    彼の髪より薄い紫が、風をうけてそよそよと揺れる。
    風に流されて、不思議な匂いが鼻をかすめた。この花の匂いだと気づいた。


    「お前はさあ、この花、なんだと思う?」

    「何、とは?」

    「俺たちにとって何か、ってことだよ」

    先程までの上機嫌な様子は鳴りを潜め、ふ、と遠くを見つめるようにして呟く。

    「こんなこと言ったら馬鹿にされるかもしれないけどさあ、俺は『心』だと思うんだよ。
    俺は昔のことはあんまりおぼえてない。楽しかったなーってこと以外はふわふわしてる。
    その中でもあの人……元の主のことは鮮明に覚えてる。焼き付いたみたいにはっきりと。
    そしたらさあ、こいつの花言葉知ってるか?
    『追憶』だってよ。笑っちまったね。
    見透かされてる、って思った。
    きっと主は、何もかも分かったうえで俺たちに花を……心を与えてるんだ。
    だから俺は……」

    「ふん、バカバカしい」

    不動が話し終わる前、おれが何か言うより先に、刺々しい声が不動の言葉を遮った。

    「……へし切り」

    「長谷部と呼べ」

    へし切りと呼ばれた男は、しかめっ面でつかつかと不動に近づくと、いきなり不動の襟元をつかみ上げた。

    「考えを持つのは勝手だ。だが他のものにそれを押し付けるな」

    「……ケッ。うるせえな。ダメ刀の俺のやることなすことケチつけて楽しいのかってんだよ!」

    ぱしん、と長谷部の手を払い、襟元を正してから俺に預けたままだった甘酒の瓶を乱暴に奪い取る。

    「おい不動、」

    「……考えおしつけてんのはどっちなんだよ」

    ボソリと呟いた言葉を聞き返す暇も無く、不動は足早に立ち去ってしまった。
    残されたのは俺と、不機嫌そうな初対面の男。

    「……あー、おれは長曽祢虎徹という。あんたは?」

    「……へし切り長谷部だ。長曽祢、歌仙兼定がお前を探していた。手すきの際に部屋に来てほしいとのことだ」

    「歌仙が?分かった。伝言感謝する」

    「要件は伝えた。俺はこれで失礼する」

    先程のことが気がかりながらも、新入りのおれに入り込める問題でないと判断し、主に一礼してからあるき出す長谷部を何も言わずに見送る。
    前を通り過ぎた長谷部から、不動と同じ匂いがした気がした。


    「難儀だよなあ、アイツらも」

    突然後ろから声をかけられる。驚いて振り向くと、いつの間にか全身真っ白な男が立っていた。

    「なっ……」

    「はは、驚いたか?」

    ぽん、とおれの方に手を置いた白い男は、長谷部が去っていった方向を向いて呟く。

    「アイツら、前の主が一緒なんだ。不動は最後まで前の主の近くにあったが、長谷部は途中で下げ渡されてな。色々思うことがあるんだろう」

    「……そうか。随分根が深そうだな」

    感じた通り、新入りのおれがどうこうできるものではなかったようだ。

    「花が咲く俺たちだけにってな!名乗り遅れた、俺は鶴丸国永だ」

    「おれは長曽祢虎徹だ」

    宜しく頼む、と差し出された手を取ろうとした瞬間、突然鶴丸が激しく咳き込み出した。

    「だ、大丈夫か!?」

    驚いてしゃがみ込んで咳き込み続ける鶴丸の背を擦る。ゴホ、とひときわ大きくえずくと、口元を抑えてる鶴丸の手からいくつもの小さな黄色い花が零れ落ちた。

    「どうだ、驚いたか!これが俺の花だゴホッゲホッ」

    びっくりして背中を擦る手を止めると、合図とばかりにがばりと顔を上げ、得意げに言い放った。

    「俺の花は体内にあってな、ちょうど肺の中に咲いてるらしい」

    だから時々息をすると花弁が詰まって、こうして吐き出さないといけないんだ。

    鶴丸は胸元を擦りながら言う。

    「全く面白い身体、面白い主だよな!他には血液が花になる奴もいて、そいつは傷口から花が咲くんだ!驚きだろ?」

    「傷口から……」

    痛々しいと思いながらも、確かに興味深いと思った。

    「不思議な本丸だな、ここは。どうして鋼であるおれ達の身体から花が咲くんだろうか」

    「不動は『心』じゃないかと言っていたな。確かに面白い考えだ」

    「だが長谷部は違うようだった」

    「ああ、アイツはなあ」

    掌の黄色い花弁を弄びながら鶴丸はカラカラと笑う。

    「長谷部は、この花を『戒め』だと思ってるんだ」

    「戒め?」

    「長谷部にとっては『今の主』が全てみたいなもんだからなあ。前の主に執着している不動が許せないらしい。そして、花を『心』と解釈している不動と、『戒め』と解釈している長谷部に咲く花が同じ花ときたもんだ。な、難儀なもんだろう?」

    さあ、と風が吹いて、主と鶴丸の掌の花弁を連れ去っていく。
    白い髪が風に靡いて顔が隠れ、鶴丸がどんな表情をしているのかおれには分からなかった。












    「長曽袮さんに咲くのはどんな花だろうな」

     夕餉の後、ぼんやりと過ごしていた時に背後からかけられた言葉。振り向くとそこに居たのは和泉守兼定と、その相棒堀川国広だった。

    「和泉守か。さあな。おれにはまだ花が咲く気配がない」

    「でも確かに気になるね。長曽袮さんに咲く花」

     喋りながら俺の近くに座り込む和泉守の左手と堀川の右手では、梅の花が風を受けて僅かにそよいでいる。
    二人に宿った花は、前の主に関わりのある梅の花だった。

    「僕達の花がこんなだから、長曽袮さんの花も前の主に関係のある花なのかな?」

    「かもしれん。だがあの人に関係のある花と言われても思いつかんな……」

    「確かになあ……うーん」

     真面目な顔で唸る二人を横目に、俺は庭の先に佇む主を眺める。
     美しい桜だ。
     主といえば、気になっている事が一つ。

    「そういえば、お前たちは主と意志の疎通が出来るのか?」

    「あー、いや、出来ねえ」

    「そうなのか。いや何、昨日お前達が主に話しかけているのを見たものでな」

    「確かに意志の疎通は出来ませんけど、でも呼びかけたら反応してくれるんですよ!『主さーん』って声をかけたらさわさわって枝を揺らしてくれるんです」

    「今は何言ってるか分からねえが、毎日話しかけてたらいつか分かるようになるんじゃねえかと思ってよ」

    「……なるほどな。そういう事なら、おれも主に話しかけるようにしよう」

    それがいいです、と堀川が笑うと隣の和泉守がよし!と、膝を叩いた。

    「今から主の所に行こうぜ!」

    「い、今からか?」

    「善は急げって言うだろ。それに、今日は俺も国広もまだ主と話してないからよ」

    ほら、立った立った!和泉守に急かされ、堀川と二人で立ち上がった。
    先々歩く和泉守と、早歩きで和泉守に追いつき並び歩く堀川の後ろ姿を眺める。
    おれも早く、この本丸の一員になりたいものだ。





























    それは突然のことだった。

    ふわり、と鼻腔をくすぐる独特の香りで意識が浮上した。
    目を開き、香りのもとを探る。まだ部屋が暗いので、夜明け前だろう。
    明かりをつけ周囲を見渡すが、部屋は昨晩眠りにつく前となんら変わりはない。
    では何処から、と上半身を起こした時、胸に違和感を覚える。
    恐る恐る胸に手をやると、柔らかい何かが己の指先に触れた。

    何かがある。

    驚いて近くの文机の上の、身だしなみを整えられるようにと、和泉守が置いていった手鏡を手に取り、己の姿をうつす。
    左胸の辺り、人間で言う心臓の丁度上の辺りに、紫の花が咲き誇っていた。


    「紫蘭、だね」

    「紫蘭…初めて聞く名だな。俺達とも之定とも違うな」

    「可愛いお花ですね!」

    日が昇った所で食事の用意をしている歌仙の所へ赴き、花が宿ったことを伝えると、歌仙はすぐに分厚い本を数冊持ってきて、俺に宿った花を調べてくれた。

    「なんつーか、似合わねえなあ、長曽袮さんに」

    「ちょっと兼さん!」

    「いや、構わんさ。俺が一番そう思っているからな」

    和泉守の言う通り、俺に宿った花は、どうにも俺に似合わないものだった。
    宿る花は何かしら宿り主と関係のあるものだ、と歌仙は言うが、こんな可憐な花と関係があると言わてもピンと来ない。

    「まあ、似合わねえがあんたに宿った花だ、あんたと何かしら関係があるんだろうよ」

    「何か、と言われてもな…」

    「花には、花言葉というものがあるよ」

    考え込むおれに、歌仙はそう言った。

    「花言葉...秋田の言っていたやつか」



    「ああ。例えば僕の牡丹だと、『風格』だとか『高貴』だね。ほら、僕にぴったりだろう?」

    「…あと確か『人見知り』ってのもあったよな」

    「何か言ったか和泉守」

    なんでもねえよ、と鋭い眼光を向けられた和泉守が慌てて言い、隣の堀川がクスクスと笑う。
    堀川の笑みに刺すような眼差しが和らいだ後、ともかく、と歌仙は言った。

    「この通り、花にはそれぞれの花言葉がある。
    もちろん君に宿ったその可憐な花にも。調べれば出てくるだろうし、僕が調べておこうか」

    「いや、有り難いが、それは俺にやらせてくれ。自分の花だ。この目で確かめたい」

    俺の申し出に歌仙は一瞬目を見開いたが、すぐにそれもそうだね、と俺に持ってきていた本を渡してくれる。

    「この中にあるはずだよ。大変だったら、声をかけてくれ」

    「俺たちにも言ってくれ。手伝うからよ。なあ国広」

    「うん!でもまずは朝餉にしましょう!」

    「それもそうだね。さあ、行こうか」

    今日の味噌汁の具は豆腐と玉ねぎだよ、やった!歌仙さんのお味噌汁大好きです!
















    部屋で歌仙から受け取った本を手に取り、ページを繰る。
    「し…し…」

    あった。紫蘭。
    3月から5月にかけて紫色の花を咲かせる蘭の仲間。性質は丈夫。5月17日の誕生花で花言葉は…。

    「5月17日…」

    ざわり、と胸が騒いだ。この日付は。

    「…前の主、の」


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