大事な人なのに「――お待たせいたしましたー」
やって来たカフェの店員が卓上にかき氷2つを置き、軽く会釈して去っていく。前に座る相葉が何かを言いたげに口をパクパクさせ、座敷席だから足はジタバタさせないが、両手を上下に振って興奮しているようだ。店員の姿が見えなくなったのを確認すると、
「プロデューサーさんっ、アジサイみたいな紫色で綺麗だね!」
注文時よりもテンションが上がっている様子だった。
「梅雨限定らしいから、頼めて良かったですね」
「うん! それに、綺麗なアジサイが見える席もあるって聞いていたけど、座れてよかったねっ」
相葉の頼んだのは紫色のシロップがかかり、アジサイの花を思わせる形に切られた果物で飾られたかき氷。さながら、食べられるアジサイのようだ。
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