快晴 最近、めっきりれいんちゃんの姿を見かけなくなった。毎週水曜には必ずやってきて、困ったように微笑んで、高くて柔らかな声でコーヒーをオーダーするれいんちゃん。
私の──友達。
もう一週間も見ていない。元々体が弱いようだったし、熱でも出しているのかな。死んだりしてないかな? ふと気づいたその異変は、私の不安をいっぱいに煽る。私はメッセージを送ろうと思い立った。
友達、だし、別にメッセージを送ることぐらい不自然じゃないし、と言い聞かせて、ナポリタンとコーヒーを運びながら文面を吟味する。
元気ある? がいいかな、でも上から目線になっちゃうかな、普通に大丈夫でいいかな。昔どう心配したっけ? 送ってどうするんだろう、返信も負担にならないかな。でも元気な証拠が欲しい。
そわそわする気持ちを抑えきれず、休憩時間が始まるとすぐにスタッフルームに駆け込んだ。そして私は一目散にフレンドリストを開く。
そこには、あの子の名前はなかった。
「.......えっ?」
針を刺された風船が一気にしぼむみたいに、浮ついた気持ちが一気に萎んでいった。
ブロックされた? 私が何かした? 見落とした?
落ち着いて、ゆっくり、何度も何度もフレンドリストの名前を読み返す。指さしもした。幻覚じゃないかと頬をつねった。でも、天地がひっくり返ったって、フレンドリストには名前がなかった。
ブロックされた。
じわじわと、その事実が胸にひびをいれる。
信じたくないが、嫌われたのが本当にそうなら、店に来なかったのも避けられてるからと思えば辻褄が合う。最後に会った時にされたナワバリのお誘いはお世辞だったのかな。でも、あの時の笑顔は本当だったと思うし、あの言葉に裏があると思えない。
たのしかったよ。また遊ぼうね。
ぐるぐる、思考がどんどん回る。私が悪かった? たのしかったよ。音を立てて加速する思考は止まらない。れいんちゃんに嫌われた? どうして。あれは嘘じゃないと信じたい。たのしかったよ。裏切られたのだろうか。柔らかな声が脳裏にこだまする。こだまして、こだまして、遠くなって。
私は何もわからなくなった。
呆然としながら、いつの間にか出されていたまかないのパスタを口に詰め込む。いつも美味しいはずのそれは、味のしないガムを噛んでいるみたいだった。