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    ichizero_tkri

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    ichizero_tkri

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    エアスケブ依頼「騎士と魔導士が再会してフラれる話の続き」です。
    関連→https://poipiku.com/8309245/9117993.html

    続きなのにまた中途半端なところで終わります。
    リクエストありがとうございました。

    盛り上がる賑やかな宴を横目に、バルコニーに立ち尽くしながらツカサは何度目かの溜息を吐いた。傍らに仕えるアキトも、その隣で用意されたグラスに口をつけるミズキも、珍しく戸惑いを滲ませた表情で佇んでいる。

    彼の落胆の原因は、単純に言ってしまえば失恋と呼ぶべきものであった。特訓隊としてこの都を暫し離れるその前にと告白をして、帰ってきたらその返事を聞かせてほしいと約束をした相手との数年ぶりの逢瀬にて、見事と言わんばかりにあっさりとフラレた。ツカサは髪をぐしゃりと掻き毟って幾度目かの悲観的な息を吐く。自信過剰と言われてしまえばそれまでだが、正直ツカサはルイに好かれている自覚があったし、送り合っていた手紙にだって何度も書いた愛の言葉を咎められたことだってなかった。

    そもそも想いを告げたあの日、返事を聞いてくれる日までツカサを待っていると宣ったのはルイの方だ。あんな言葉、結ばれて然るべきものと期待どころじゃない確信を抱いてしまうじゃないか。どこへ向ければいいかも分からない悔しさに唇を噛めば、脳裏に浮かぶのはひどく冷たい彼らしくない色のない表情。
    昔は、魔導士は恐ろしいと遠ざけられ眉を下げながらも、自分と話すときはあんなにも楽しそうにしてくれていたのに。その面影すらすっかり失ったまるで冷淡な大人のそれに、あんなのはオレが愛したルイには似合わない重い表情だと僅かな怒りが募っていく。

    ツカサが王都を離れていたこの数年、ルイになにか大きな変化が訪れたのは間違いなかった。思えばここ最近は手紙の返事もなく、単に忙しくしているのかと思ったていたがそうではないなにか深い事情があったのだろう。そう思うと沸々としていた悔しさが嘘のように鳴りを潜めていた。

    「……隊長、いつまでそうしてんすか」
    「そ、そうだよ隊長〜。ほらお腹空かない? そろそろなんか摘みに行こうよ!」

    左右に立つ副隊長たちに促されて、ツカサは漸く顔を上げる。いつになく神妙な面持ちに、先刻の固まったまま廊下に倒れた姿を思い返して二人はごくりと唾を飲んだ。仮にも今宵の宴の主役ともあろう男が、こんな場所で再度倒れるような珍事となれば事である。どうにか今夜だけでも気を保たせてやらねばと静かにアイコンタクトを交わす二人に気付きもしないまま、ツカサはゆっくりと口を開く。

    「……なぁ、お前たち」
    「なんすか」
    「──ルイは、やはり美しかったな……!」
    「はい?」

    途端、情けなく表情を綻ばせうっとりとかの魔導士の姿を思い浮かべて笑う隊長に、あんたとうとう頭おかしくなったのか、とアキトは思わず声に出す。失礼なことをと嘆息するツカサはいつもより元気はないが、いつも通り想い人を褒め称える様と同じく目を蕩けさせている。

    「いや、前々から美しくはあったが成長してより大人の色気が出たというかだな……! 体は相変わらず細いが背も伸びて、可愛らしかった声も随分と落ち着きのあるものに! あの声で待ち焦がれた甘い愛の告白を聞いた日には、それこそ頭がおかしくなってしまうやも知れんな!!」
    「もう十分おかしいだろ」
    「こらこら! えーっと、ツカサ隊長思ったより落ち込んでない感じ?」

    額に手を当てさながら演説を行う偉人のように恍惚と言葉を並べるツカサに、アキトは辛辣に言葉を零し、ミズキは気を遣うように顔を覗き込む。部下の言葉に、ツカサは軽く首を傾げながらいいや?と笑った。

    「物凄く落ち込んだし何故なのかと愕然としているし、正直今も万全とは言えん。だが……それとルイが更に美しい魅力的な人になっていたのは全くの別問題だからな!」
    「……あー、そういえばツカサ隊長ってこういう人だったね」
    「あれだけ素晴らしい男の隣ではどんな花も見劣りしてしまう。それこそ……オレが、どんなに立派な隊長になって帰ってきたとしてもだ」

    腕を組み、ツカサは夜空を仰ぐ。きらきらと瞬く星は美しく、捕まえて宝箱に閉じ込めておきたいと手を伸ばしそうになるが、今は決して届くことはない。

    「……ルイは、あんな子じゃない。オレがいない間になにか変わらざるを得ないことが起きたのは、想像に難くない」
    「……でもあの人、あんたのことフッてるんすよ」
    「それは、オレがまだルイの隣に並び立つに相応しくない男だったというだけだ」

    コツン、と一歩前に進んでツカサは胸を張る。その誇らしげな背中は、都に置いてきた想い人の素晴らしさを飽くことなく幾度も語ったあの自慢気な表情によく似ていた。

    「ルイに何かが起きていたとして、その壁をオレの愛が越えられなかったのはひとえにオレの魅力不足に他ならん。ならばオレの為すべきことはただ一つ! 更にオレ自身を磨き魅力的な男になり、ルイの心に巣食う壁さえも飛び越え、改めて良い返事が貰えるよう努力すること!!」
    「……はは、諦めが悪いっつーかなんつーかッスね、ツカサ隊長は」
    「あはは、でも隊長らしいよ! 絶対に諦めないってところ、騎士としては大正解じゃない?」

    それぞれに笑みを浮かべ胸を撫で下ろすアキトとミズキへ、当然だろうとツカサも微笑む。

    「長いこと想い焦がれた身だぞ? たった一度断られたくらいで、簡単に折れる恋慕なわけがないだろう」
    「ひゅーう、ツカサ隊長さっすが!」
    「……ま、仕事に支障ない範囲で頼みますよ、隊長。あの魔導士に気取られて敵に斬られるなんてヘマ、しないでくださいよ」
    「勿論だ! 全てを完璧に熟してこそ魅力的な騎士隊長というものだからな!」

    手始めにまずはこの宴をしっかりと楽しまねばなと宣言したツカサを先頭に、三人は改めて華やかな会場の中へと戻っていく。

    乗り越えるべき彼の心の中の壁がどれだけ高く堅牢なものであったとしても、必ず届くまで足掻いてみせるとツカサは決意する。あの美しく愛しい魔法使いに、研ぎ澄ませ磨き続けた刃のようなこの想いを、きっと受け止めてもらうのだ。


    * * *


    身を包んだ大きな風で辺りの草花を揺らしながら、ルイはふわりと薄暗い山小屋の前へ降り立つ。ギャア、と鳴る声に相変わらずの挨拶だなと思案していれば、その鱗を撫でていた男が驚きつつも変わらない表情でこちらを見つめていた。

    「──ルイさん? お久しぶりです、なにか御用でしたか?」

    王都の騎士の身なりに近い衣装を身に纏い、しかし馴れ合いに染まるつもりの窺えない、闇夜によく似た漆黒の出で立ち。王族も貴族も騎士でさえも綺羅びやかに着飾る住処よりよっぽど落ち着くなと、ルイは彼の問いに静かに首を振る。

    「城で宴があって、耳障りでね。避難してきただけだから、放っておいてくれ」
    「宴? なにか、記念になるようなことがある日なのでしょうか?」

    疎くて申し訳ないですと呟く彼が、この国の詳細に明るくないのは致し方のないことだ。青年は、王都から少し離れたこの山の深くに幼い頃から暮らしていた。それも今目の前に鎮座するそれと同じ種族の、ドラゴンに囲まれて育った身である。騎士団がそれを見つけたのは少し前のことで、国は青年を含めたドラゴン一族の保護と安全を保証する代わりにその存在を他国への牽制として利用する方針を固めていた。無論、実際に他国との争いが起きたとして彼らを使うつもりはないのだろうが。

    故に、国の事情に詳しくない彼は目立つ色合いの衣服も好まず、都に住まえばドラゴンと離れて暮らすことになるのが惜しいからと、この突貫処理の山小屋を住まいにしていた。衣食住の約束は為されているが、その異質な経歴からこの場所を訪れるものはそういない。そもそも、ドラゴンなんて畏怖すべき存在に軽々と近寄ろうと思う者もいないのだ。

    それがどうにも、ルイには親近感を覚えさせた。なにをしたわけでもない、ただそこに己として存在するだけで恐れられ、忌み嫌われる。こちらがどれだけ純真に想いを抱えていたって、勝手に捻じ曲げて怯えて非難して、砕くのだ。だからルイは、深く干渉されるわけでもない、同類の匂いを感じるこの場所を比較的に好んでいた。

    「騎士団がね。新しい隊の誕生を祝っているだけだよ。魔導士の僕には関係ないけれど、騒がしくて研究にも集中出来ないから」
    「そうでしたか。ここは静かですから、ゆっくりしていってください」
    「ああ。……その子が、迷惑でなければ」
    「いえ、大丈夫です。顔には出ませんが、とても喜んでいますよ」

    顔に出ないのは君もだろうと、弾んだ声の青年にルイは肩を竦める。腹の探り合いと嫌悪の目ばかりが飛び交う都に一人で何年も足掻いていたせいか、表情にこそ出ないものの素直に言葉を吐く者を相手にするのは慣れないが、静かに休んでいられるならそれでいい。

    木の根に体を預け目を閉じれば、風に揺らぐ木々の葉の音や繊細な虫の鳴き声が僅かに聞こえる。それに混じって脳の奥、何年かぶりに自分の名前を呼んでくれた男の声が小さく響く。

    (……ツカサくん)

    帰ってきたら告白の返事をと約束を交わし、本当に立派な騎士隊長になって帰ってきた、積年の想い人。彼だと気付いた時には驚いた。幼い頃から一等に美しい人だと憧れていたが、あんなにも麗しく逞しい騎士になって帰ってくるとは。告げられる甘い言葉も改めての告白も、渋さを増した低い声から告げられるそれらはどうしようもなくこの胸を揺さぶるのに。

    (僕も好きだよって、ずっと待ってたよって、言えたらよかったな)

    待っていると抱えた想いを支える腕にもう力は入っていなくて、いつしかそれは胸の奥底に沈めてしまったのだ。
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    ichizero_tkri

    DONE12/12頒布の将参(🌟🎈)同人誌の書き下ろし分の、🔞シーンをカットしたものをこちらに再録します。
    行為を匂わせる描写はありますが、18歳以下の方もお読みになれる全年齢対応編集版になっています。
    ◆それから愛は未来を唄う


    「──うむ、良い報告書だ。ありがとう、下がっていいぞ」

    部下の一人から差し出された報告書に、ツカサは微笑を携えて頷く。ありがとうございます、と返した部下は深々と頭を下げ、その傍に控える元参謀にも和やかに会釈をして執務室を去っていく。未だ慣れないながらも、ルイも小さく頭を下げる。

    かつて──大臣に道具として飼われていた頃は、こうも心穏やかに職務に励むことなどあっただろうか。それを労わるように頭を下げられることなど。ツカサにこの心身を捧げ、仕えるようになってからもう随分と経つが未だ、慣れない。──というよりは、落ち着かない、気恥ずかしいという言葉の方が相応しいのかも知れない。

    一人静かに戸惑うルイを横目に、ツカサは先刻受け取った報告書に再度視線を落とす。黒い油の研究経過報告書。あの大臣が、ルイを遣わしてまで奪おうとした理由もわからないでもない。どうやらルイは、現存する大臣の部下の中でもとりわけ実力のある人物であったらしい。それだけ早々に心を殺して操り人形になることを選択した結果なのだろうと思うと、手離しに褒めてやれる気分にはなれない。いつか見た夢の、幼い姿の彼を思い返す。あんなに小さな頃から、家族という拠り所を失い一人苦悶の中生きてきたのだろう。ツカサはその顔に痛みを浮かべる。この幼子の道筋に思いを馳せる度、同等と呼ぶには傲慢な感情に胸が痛むのだ。
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