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    ichizero_tkri

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    ichizero_tkri

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    騎士🌟×マドソ🎈

    こういうのが書きたいな、のやつです
    捏造と独自設定がいっぱいです

    こつん、と頭に小石が当たってルイは顔を顰めた。振り返った先にはひそひそと笑う騎士見習いの子どもたち。人に対して石を投げるような者の手に握られては、あの木刀も可哀想にと目を細めた。それを挑発と受け取ったのか、彼らは足元の小石を拾い上げるとまたしてもルイへと投げつける。
    炎で焼き切ってしまおうか。けれど、そんなことをしては師匠の教えに反する。魔法は誰かを傷つけるためにあるのではない。人々を、笑顔にするためにあるのだ。ではこの状況で、どんな魔法を使えば自分を守れて、あの愚かな子たちを笑顔に出来るというのだろう。考えてもわからなくて、ルイはただ降り注ぐ悪辣な感情を耐え忍んだ。

    「──こらぁ!ルイになにしてるっ!!」
    「……!」

    大きな声と共に目の前に立ちはだかった背中に、ルイは目を輝かせた。騎士見習いの子どもたちはやばいと口々に零して逃げていく。あいつら、と悔しそうに唇を噛む少年を、ルイはその裾を掴んで振り向かせた。

    「……ありがとう、つかさくん」
    「ルイ、怪我はないか?まったく、あんなことばかりしてきしのかざかみにもおけないやつらだ!」

    拙い言葉で憤りを表す少年の名はツカサという。きらきらと輝く美しい金の髪を持つ、騎士見習いの少年だった。

    「……しかたないよ。魔導士は、きらわれものだから」

    髪についた土汚れを払ってくれるツカサの手を受け入れながら、魔導士見習いのルイは俯きそう答える。この国では魔法を扱えるものは少ない。故に恐れられ、嫌われている。王国直属の魔導士部隊はただの一つ、騎士の部隊数とは比べ物にならない。少数派は淘汰されるものだと、ルイは肩を落とす。

    「なにを言う、ルイ。どんな理由があっても、人を守るきしがルイを傷つけることは、ただしくないことだ」
    「……じゃあ、それならつかさくんは、とてもすてきなきしさまになるね」
    「ハッハッハッ!とうぜんだ!かならずりっぱなきしたいちょうになって、ルイを守ってやるからな!」
    「うん、ありがとう。じゃあ、つかさくんのことは僕が守るね」
    「ああ!ルイのまほうはすごいからな!たよりにしてるぞ!」

    誰もが魔法の力を認めながらも、その強大さに畏怖し、彼らを遠巻きに見る。時にはこうして、冷たい感情をぶつけてくる。
    でも、彼だけは。ツカサだけは違った。騎士とは人々を守るために在るといい、誰よりも努力し誰よりも優しくルイに笑いかけてくれる。ルイにとって、たった一人の友だちだった。ルイは幼心に、ツカサのことを好いていた。友としても、人としても。


    * * *


    「ルイ!聞いてくれ!特訓隊にえらばれたぞ!」

    バン、と音を立てて魔導士見習いの練習部屋に飛び込んできたツカサに、驚いた少年たちの魔法が被弾した。いきなり飛び込んでくるからだと笑い飛ばすルイの師匠に回復魔法で手当をしてもらってから、ツカサはルイと共に宿舎のベランダにやってきた。

    「特訓隊……あの特訓隊にえらばれたのかい?すごいね、つかさくん」

    この国では冬になると、騎士見習いの中から実力の高い者たちを選出し遠方の街で長い特訓と共同生活を送らせるという恒例の訓練があった。無論、騎士見習いにとってこれに選ばれるのは名誉なことであり、その実力を高く買われているということになる。現在各騎士部隊の隊長を務める者の殆どは、特訓隊に参加していた面々でもある。

    「ああ、これで立派な騎士隊長にちかづいたぞ!」
    「……おめでとう、つかさくん」
    「……ルイ?」

    ルイは知っている。特訓隊はただでさえ数年を遠方の街で過ごすことになる。加えて、その中から更に数名が選抜され、別の街でまた数年実務経験を積む運びになっている。
    ツカサが夢の騎士隊長に近付くのは、本当に嬉しい。けれどその間、二人はずっと離れ離れなのだ。浮かびそうになった涙を堪えてルイは笑う。彼には体の弱い妹君がいるという。とても兄に懐いている彼女の方が、ただの友人でしかない自分よりずっと寂しいだろう。

    「きっとすてきな騎士隊長になってね、おうえんしているから」
    「ルイ……」

    笑って見送らなければ。彼の門出が、未来が夢見た明るいものであるように。そう願って告げるルイの手を、ツカサががしりと掴んだ。

    「ルイ!オレは、騎士隊長になる夢はあきらめられない、絶対に叶えてみせる」
    「つかさくん……うん、頑張って──」
    「ルイ、好きだ!!」
    「──え?」

    聞き間違いだろうか。きょとんとするルイへ、ツカサは恭しく膝をついた。まるで、王に忠誠を誓う麗しき騎士のように。

    「好きな人を置いていくことはとても悔しい、だがこの夢を叶えることもやめたくない。だから、ルイにこの想いを伝えて……オレが帰ってきたら、その返事を聞かせてほしい!」
    「……今じゃ、だめなのかい?」
    「だめだ!離れがたくなってしまう!」

    どうやら想いが通じ合っている前提らしい。ルイは思わず笑ってしまった。

    「お前にも妹にもたくさん手紙を書くぞ。寂しくなんてないように!そして帰ってきたら、告白の返事を聞く。それを楽しみにオレはこの特訓に励む!」
    「……うん。君が待っててくれるなら……僕も待っているよ。つかさくんのことを、ずっとずっと……告白の返事を聞いてもらえるように、待ってる」

    だから、僕がきっといい返事をしたいと思うような、立派な騎士様になって帰ってきてね。

    ルイの言葉に、ツカサは大きく大きく頷いた。


    * * *


    「──そして、ついに、ついに!!この日が来たというわけだ!!」
    「ツカサ隊長うるさーい」
    「聞き飽きたッス」

    その話一体何度目ですか、と副隊長のアキトが肩を竦める。そんなに何度も話してしまっていただろうかと首を傾げるツカサに、ミズキはけらけらと笑った。

    「今朝も同じ話してたじゃん、ツカサ隊長。というか、こっちに帰ってくるまでの数日間毎朝!」
    「む、そうだったか。すまん、漸く会えると思うと気が逸ってしまってな」
    「つか、なんでオッケー貰える前提で話してんすか?もしかしたらそいつ、もう他に好きなやついるかも知れないじゃないすか」
    「いや?ルイがオレ以外を好くわけがない」
    「えー?手紙にそう書いてあったとか?」
    「いいや、信じてるだけだ!なにせオレだってこの数年、ルイのことを愛し続けているのだからな!!」

    揺れる馬車の中で高らかに笑う隊長に、こりゃだめだと隊員は揃って呆れて肩を竦めた。とはいえ、実力も確かなこの騎士隊長の積年の想いが今日いよいよ届くのかと思うと、長々とその話を聞かされてきた隊員たちは少し楽しみでもあったのだ。
    魔導士見習いのルイといえば、自分たちが特訓隊として王都を離れる当時から一目置かれる存在だった。あの若さでかなりの実力を持つ彼は師匠である魔導隊長からも大層可愛がられていたし、成長すればその師匠さえも越える大魔導士になるだろうと期待されていた。尤も、それと同じくらい魔法を畏怖する者たちの厳しい目にも充てられてきてはいたようだが。

    「ああ楽しみだ……どんなに美しくなっているだろうか、ルイは昔から美人だったからな!オレもルイに見合うようなかっこいい男にならねばならんと常日頃磨いてきたものだ。早く会いたい、騎士隊長という夢を叶えたことを一番に伝えたい……!」
    「はいはーい。一番に伝えなきゃいけないのは王様にだよー?」
    「本当、なんでこんなのが隊長なんだろうな……ま、強さは確かなんだけどよ」

    馬車がガタンと大きく揺れる。王都の門をくぐったのだ。いよいよだ。ツカサは逸る気持ちを表情に乗せ、窓の隙間から街を眺める。とうとう帰ってきた。最近は忙しいのかなかなか手紙の返事もなかったが、恋焦がれたあの子の元へ、ついに。

    王へ謁見し、家族に会いに行ったら。その後は夜の宴まで自由だ。その時こそついに、愛しい人を迎えにいける。まず初めになにを言おうか、愛を告げるか、夢叶ったことを伝えるか。浮足立つ騎士隊長を乗せた馬車はとうとう、王城の中へと入っていった。


    * * *


    王による新たな騎士隊長及び副隊長の任命式が終わり、ツカサたちは一旦それぞれ我が家へと戻った。ツカサは妹からの熱い抱擁と祝いの言葉を受け止め再会を喜んだ後、再び城へと戻っていた。
    手紙にも書かれていたが、咲希が元気になっていて本当に良かった。なんでも新しく開発された薬が咲希の体に合っていたおかげでめざましい回復を見せたとのことだ。両親も健在、妹の体調もすっかり心配が要らなくなった。杞憂していたものを清算出来たツカサは、いよいよ最愛の人との再会を心待ちにするばかりであった。

    「あ、ツカサ隊長おっかえり〜」
    「お疲れっす」
    「ああ、二人とも戻っていたか。家族とはどうだった?」
    「元気そうで安心したよ!騎士になったボクもカワイイって褒めてくれてさ〜」
    「ウチは……姉貴が、騎士隊の副隊長なんて生意気ーって。まぁいつも通りだな」

    その時の光景が目に浮かぶなぁと笑うミズキの横で、ツカサははっと目を見開いた。長い廊下の向こう、分厚い本を片手に歩く青年。背が伸び表情や格好が変わろうと、見間違えるはずがなかった。突然走り出した隊長に驚く部下二人を置いて、ツカサは満面の笑みで男へと駆け寄った。

    「──ルイ!!」
    「……え」

    呼ばれて漸くこちらへ顔を向けた男は、モノクルの奥の目をきゅっと細めた。

    「……誰?」
    「ああ、見た目が少々変わったから分かりにくいか。オレだ、ツカサだ!ルイ、久しいな、漸く帰ってきたぞ!!」
    「……ツカサくん?」

    その目の奥に潜んでいた警戒心がようやっと薄まり、ツカサは胸を撫で下ろした。自分はすぐにルイをルイと認識出来たが、それが叶わなければ見ず知らずの相手に突然名前を呼ばれたことになる。警戒されるのも当然だと納得をして、ツカサは辛抱堪らずその手を取った。

    「ああ、そうか。今日はあの年の特訓隊が戻る日だったね」
    「うむ、あの日の約束を果たして帰ってきたぞ。……美しくなったな、ルイ。いや昔から美しかったが、より綺麗に──」
    「なんだいそれ。よくそんな歯の浮くような台詞が言えるね。騎士様はそういう教育も受けるのかい?それは随分と素晴らしいね」
    「る、ルイ……?」

    戸惑うツカサに追いついたアキトとミズキも、はてと首を傾げる。これが隊長が毎朝のように語った、ツカサの帰りを心待ちにしてくれていた愛しい人なのだろうか。他人の空似、とでも言いたいがその立ち姿は魔導士のそれだ。この国で王城に出入りを許されている魔導士のルイ、なんて人物はただの一人しかいないだろう。
    一方でツカサは戸惑いつつも、人とは成長し変化していくものだと頷いた。ルイもいつまでも小石を投げられるような泣き虫でいるわけがない。彼もまた成長し強くなったということだ。きっとこの物言いだって、それに伴う変化なのだ。

    「ルイ、改めてになるが……約束を果たし帰ってきた。あの日の、告白の答えを、聞かせてくれるか?」

    ツカサはその場に跪き、あの日のようにルイの手を恭しく取った。ルイは二度三度瞬きをするとああ、と目を細め眉間に皺を寄せた。

    「確かに、そんな話もしたっけね」
    「……ルイ?」
    「じゃあ改めて。──お断りします」
    「へ」
    「えっ」
    「は?」

    思わず後ろに控えていた二人も声を上げてしまった。

    「聞こえなかったかい?お断りします。騎士と愛し合うつもりはないよ。僕は一人で魔法の研究を続けていたいんだ」
    「る、るい、しかし……!」
    「ツカサくん。諦めて新しい恋を見つけるでも仕事に打ち込むでもするといい。再会出来て嬉しかったよ。それじゃあ」

    ツカサの手を振り払い、ルイは淡々と廊下の向こうへ去っていく。堪らず追わなくていいのかよとアキトがツカサの肩を叩けば、ツカサはそのポーズで固まったままごとりと床に倒れ込んだ。

    「わーーーっ!!?ツカサ隊長しっかり!!?」
    「ああもう面倒くせぇな!?」

    ルイからの言葉を未だ上手く咀嚼出来ないまま、ツカサは部下二人に抱えられて医務室へ運ばれるのだった。
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    ichizero_tkri

    DONE12/12頒布の将参(🌟🎈)同人誌の書き下ろし分の、🔞シーンをカットしたものをこちらに再録します。
    行為を匂わせる描写はありますが、18歳以下の方もお読みになれる全年齢対応編集版になっています。
    ◆それから愛は未来を唄う


    「──うむ、良い報告書だ。ありがとう、下がっていいぞ」

    部下の一人から差し出された報告書に、ツカサは微笑を携えて頷く。ありがとうございます、と返した部下は深々と頭を下げ、その傍に控える元参謀にも和やかに会釈をして執務室を去っていく。未だ慣れないながらも、ルイも小さく頭を下げる。

    かつて──大臣に道具として飼われていた頃は、こうも心穏やかに職務に励むことなどあっただろうか。それを労わるように頭を下げられることなど。ツカサにこの心身を捧げ、仕えるようになってからもう随分と経つが未だ、慣れない。──というよりは、落ち着かない、気恥ずかしいという言葉の方が相応しいのかも知れない。

    一人静かに戸惑うルイを横目に、ツカサは先刻受け取った報告書に再度視線を落とす。黒い油の研究経過報告書。あの大臣が、ルイを遣わしてまで奪おうとした理由もわからないでもない。どうやらルイは、現存する大臣の部下の中でもとりわけ実力のある人物であったらしい。それだけ早々に心を殺して操り人形になることを選択した結果なのだろうと思うと、手離しに褒めてやれる気分にはなれない。いつか見た夢の、幼い姿の彼を思い返す。あんなに小さな頃から、家族という拠り所を失い一人苦悶の中生きてきたのだろう。ツカサはその顔に痛みを浮かべる。この幼子の道筋に思いを馳せる度、同等と呼ぶには傲慢な感情に胸が痛むのだ。
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