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    kuuronnzyou

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    kuuronnzyou

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    プロローグ 目覚め、或いは「おはよう。皆。」
    カリカリと音が響く。紙を鉛筆が引っ掻く。
    「出席をとります。と言っても見ればすぐわかるけどね。でも、必要だから呼ばれたらちゃんと返事をしてね」
    いつも通りの先生の優しい声。分かってると思うけどと付け加える。
    「常音路 影慈」
    はいと凛とした声が空気を震わせる。
    「篁 雪遥」
    はーいと少し砕けた声が教室に響く。
    「鈍色 犀」
    はいと短く声を出す。手は止めない。
    どうしても絵を描きたかった。この一枚だけは、完成させたかった。
    「今日も皆と会えてよかったよ」
    と先生は話した。いつも通りの笑顔。何も変わらない日常。


    と違和感が一つ。

    酷く見慣れた隣の席には。

    その席の主がいない。

    ぽつりと置かれた花瓶がやけに気持ち悪くて。

    目を逸らしたくて、スケッチブックを見つめた。

    僕にしてはおかしい事に、黒い線がぐちゃぐちゃと形を為さずに紙の上を踊ってるだけだった。


    …。


    目が覚めた。



    「皆昨日は良く眠れたかな?」

    今日も同じ問い掛けをする。

    生徒の反応もいつも通りそれぞれで。

    日常の象徴のように思えた。それは確かにかけがえのない日常。
    机の少ない教室も建て付けの悪いドアも、風通しだけいい木枠の窓も、ギシリと音を立てる床も余った机にぽつりと置かれた花も。

    俺にとっての幸せだった。



    ちかっと視界にノイズが走る。
    目に映るのは赤。
    身体は動かない。喉が情けなくヒュッと音が出る。
    目線を離すことも叶わず、赤の光景が目の奥に焼き付けられる。
    パンッと手拍子が鳴る。
    そこにあったのはいつも通りの風景だった。
    心臓の音がうるさい。首筋を汗が垂れる感触がリアルで今の出来事が自分の思い過ごしにはさせてくれないように感じた。



    不変-いつまでも変わらないこと。変化しないこと。

    不変というものは存在しないそうだ。
    そうだと思う。

    だって、だっておれは…。

    ねぇ先生。

    あの時、おれが

    あ。

    ぐしゃり。



    いつも通りの教室。いつもなら誰よりも早くに教室に居るその人がいないのがおかしくて。

    息を切らした事務員が口を開く。

    「落ち着いて聞いてください。厳島先生が亡くなりました」

    その言葉に耳を疑った。

    【プロローグ 目覚め、或いは 了】
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