高麗の遣使 二:弁明「報せが遅れた理由は二つございます」
「聞こう」
大王は上体を前に乗り出した。
裾代と蠏足がひれ伏して言う。
「そもそも、比楽湊は吾が江沼国と加賀国の境にあり、漁業を巡って長年揉めておりました」
「此度の遣使は、うちらぁ江沼の浦人が先に見つけたんですが、着いた浜辺が加賀国側やったで、あっちの国造・道君が饗すと買うて出たんでさあ。 ほやけど、加賀国にゃあ三年前の飢饉や疫神で通事が足りとらんと、意思の疎通に時間がかかったようざ……」
「その報せを受け、吾らのほうから通事を遣わしたのです。 それが理由の一つ」
1843