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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、フェネス夢
    ハウレスに代わって担当執事を務めることになったフェネスの葛藤。

    日常の思い出vol1で、自分にはハウレスの代わりなんて務まらないと思い悩むフェネスを見たときからずっと思っていたことを書いてみました。
    たぶんこのフェネスは、白黒の館に行く前の彼だと思います。後だったらここまで卑屈にはならなさそう。

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknk夢
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #フェネス
    phoenes.

    ありのままの君でいて 主人の部屋の扉を前に、フェネスは重苦しいため息を落とした。この部屋を、こんなに暗い気持ちで訪うのは、悪魔執事となってからの三百年で初めてのことかもしれない。
     フェネスは今日一日、依頼で不在のハウレスに変わって、主人の担当執事を務めることになっていた。
     平生であれば、主人の手伝いをする担当の日は、眩いほどの幸福に満ちている。この日だけは、誰に憚ることなく、無条件で主人の傍にいられるからだ。この屋敷に住む執事たちは皆、主の担当を務めたがっていて、だから担当執事はローテーション制となっていた。
     順番が回ってくるのは、おおよそ半月に一度ほど。多くの者と同様、フェネスはその日が来るのを指折り数えて待ち焦がれている。
     だから本来であれば、代理とはいえ担当執事の番が回ってきたことを喜ぶべきなのだ。そうできないのは、ハウレスの代わりだという事実が、プレッシャーとしてフェネスの背に重くのしかかっているからだった。
     私生活における家事能力の低さはさておき、執事として、ハウレスの仕事ぶりは完璧だ。彼と同じように主人の手伝いができるだろうかと考えると、胃の腑がしくしくと痛むような心地がする。
     とはいえ、いつまでも扉の前でぐずぐずしているわけにはいかない。フェネスは心を落ち着けるために深呼吸をしてから、ドアをノックした。
    「どうぞ」
    「……失礼します」
     応答を待って、フェネスは主人の寝室へ足を踏み入れた。部屋の主はすでに身支度を済ませ、ゆったりと椅子に腰掛けて寛いでいた。
    「おはよう、フェネス。今日は一日、よろしくね」
    「おはようございます、主様。こちらこそ、よろしくお願いします。ハウレスと同じようにはできないかもしれませんが、精一杯お手伝いいたします」
     言いながら、フェネスはさっそく自己嫌悪に苛まれた。自信がないからといって、最初から保険をかけるような物言いをするのは卑怯だろう。やっぱり俺なんかじゃ……と、いつもの卑屈に陥りそうになって、ぎゅっと奥歯を噛み締める。
     一方の主人はというと、フェネスの言葉にきょとりと目を瞬かせたあと、悲しげに眉尻を下げていた。
    「あの、フェネス……」
    「は、はい!」
     名を呼ばれ、内心の葛藤から主人へ意識を切り替えたフェネスは、そこでようやく彼女が落ち込んだ様子であることに気づいた。
    「あ、主様? どうかしましたか? もしかして、お加減が優れないのでは……」
     慌てて矢継ぎ早に問いかけるけれど、主人はどの質問にも首を横に振った。医療担当のルカスに診てもらうべきかとフェネスが悩み始めたころ、彼女はようやく理由を口にした。
    「ねえ、フェネス。私……もしかしたらあなたに酷い勘違いをさせて、傷つけてしまったのかも……」
    「えっ?」
     言われた内容は思いもよらないことで、残念ながらフェネスには理解が及ばなかった。
    「あの、それは、どういう……?」
    「私、フェネスに……ハウレスやほかの誰かの代わりになってもらおうだなんて、思ったことないよ。今回も、そういうつもりでお願いしたわけじゃない」
    「あ……」
     主人は、フェネスが自分に自信を持てないことも、ほかの執事たち――とりわけ同室であるハウレスやボスキに対して劣等感を抱いていることも、知っている。
     だから、今回のことがフェネスのコンプレックスを刺激して、自尊心を傷つけてしまったのではないか、と。そう考えて、心を痛めてくれたのだろう。フェネスの主人はそういう、優しいひとなのだ。
    「フェネスは、フェネスらしく仕事をすればいいんだよ。ハウレスと同じようにする必要なんてない。ハウレスもボスキも、ほかの誰も、フェネスと同じようにはできないんだから。"みんな違って、みんないい"、だよ」
     ――フェネスには、フェネスのいいところがある。
     フェネスが自己嫌悪に陥るたび、仲間たちはそう言ってくれるけれど、彼はその言葉を素直に受け入れられた試しがなかった。一つ、二つ、長所があったとして、自分が劣っていることに変わりはないと、そんなふうに考えてしまうのだ。
     けれど今、主人がくれた言葉は、不思議とすんなりフェネスの心に染み込んでいった。みんな違って、みんないい。それは自分の短所ばかりを数えてしまう、ありのままのフェネスを認め、赦してくれる言葉だった。
    「……素敵な言葉ですね」
    「そうでしょう? 私の好きな詩人の言葉なんだよ」
    自慢げに言って、主人は一編の詩を諳んじた。リズムに乗って歌うように紡がれる声は心地よく耳に馴染み、ずっと聞いていたい心地になる。
    「あのね、フェネス」
     暗誦を終えた主人がちょいちょいと手招きをするので、フェネスは膝を折って傍へ寄った。彼女は口元に手を添えて、まるで内緒話でもするかのように声を潜める。
    「昨日ハウレスから、明日は留守にするから誰かに代わりをって言われたとき、フェネスを指名したのは私なんだよ」
    「え……」
    「フェネスに手伝ってもらいたいことがあるんだ。力を貸してくれる?」
     嗚呼――フェネスは思わず感嘆を漏らした。全く、このひとには敵わない。そんなふうに言われたら。彼女がフェネスの力を必要として、認めてくれるのであれば。いつか、そう遠くはない未来に、自分自身に胸を張れる日がやってくるのかもしれない。そんなふうに思える。
    「もちろんです。俺にできることがあるなら、なんでも言ってください」
     恭しく答えたフェネスの表情は、晴々としていた。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ハウレス夢。
    過労で熱を出したハウレスが主様に看病される話。
    なおハウレスは回復したあと、ボスキやアモンから主様に甲斐甲斐しく世話されたことをさんざんからかわれたそうな。

    担当執事をつついてると、いやそのセリフそっくりそのまま返すよ!?って思うことが多くて、この話もそういうアレから生まれました( ˇωˇ )
    きみに捧げる特効薬 今になって思い返して見ると、朝起きたとき、いつもより体が重いような気はしたのだ。けれど、頭が痛いとか咳や鼻汁が出るとか喉が痛むとか、ほかの症状がなかったものだから。少し疲れが溜まっているのだろうと、ハウレスは軽く考えてしまった。
    「おそらくは、過労だね」
     診察していたルカスが真剣な表情で告げるのを聞いて、ハウレスの主人はひどくショックを受けた表情になった。主様がそのように悲しそうなお顔をされる必要はないのにと、ハウレスは思ったけれど、熱があることを自覚してしまった体はやたらと重だるくて、口を開くこともままならなかった。
     ハウレスの異変に気づいてルカスの元へと連れてきたのは、他ならぬ主人だった。
     この日――。ハウレスは寝起きに体のだるさを覚えたものの、大したことではないと断じて普段どおりに仕事に取りかかった。屋敷中の窓を開けて空気を入れ替え、トレーニングをこなし、主人に起床時間を知らせにいった。身支度を済ませた彼女を食堂までエスコートするために手をとって、そこで眉間に皺を寄せ険しい顔になった主人に手首や首筋、額などを触られた。そうして、有無を言わさずここへ連れてこられたのだ。
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