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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、ボスキ夢。
    冷房の効きすぎた電車が寒すぎて、途中下車して帰ってきた主様をボスキが出迎える話。

    ボスキは、自己肯定感はそれなりだけど、自己評価はあんまり高くなさそうだなと思っています。
    気遣いは細やかだし、ひとのことを全然見てないようで、一番見ているのは実は彼なんじゃないかなと思います。

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #aknk夢
    #ボスキ
    boskis.

    気づけばあんたのことばかり いつ主人が帰ってきてもいいよう部屋を整えたボスキは、作業を終えると手持ち無沙汰になって、時計を見やった。
     時刻は二十時をすぎたところだ。いつもならあちらの世界で仕事を終えた主人が帰ってくるころだが、今日は予め、遅くなると聞かされている。少なくともあと一時間は帰ってこないだろう。
     つい「早く帰ってこねえかな」と独り言ち、ボスキは慌てて周囲を見回した。屋敷の主人の帰宅を待ちわびているのは彼だけではないが、それをほかの執事に聞かれるのは面映ゆい。ましてや本人に聞かれてしまったら、しばらくはどんな顔をすればいいのかわからなくなるだろう。
     緩んだ気を引き締め直すように深呼吸を一つ。待っている間にトレーニングでもしようかと思ったところで、まだしばらく帰らないはずの主人が帰ってきた。
    「主様?」
    「た、ただいま、ボスキ」
    「ああ、おかえり」
     予定より早い時間に帰ってきたこともそうだが、彼女が寒そうに両腕を摩っているのを見て、ボスキは目を瞬かせた。
     九月に入り、こちらは日に日に秋が深まっている。だが先日、主人から聞いたところによれば、向こうでは夏の厳しい暑さが尾を引いていて、まだまだ半袖一枚で過ごせそうだということだった。
    「寒いのか? 大丈夫かよ」
     ともかくまずは座ってもらおうと、ボスキは手を差し出した。
     出会ったばかりのころの彼女は、ほんの僅かな距離の移動でもエスコートしようとする執事たちに戸惑っていたものだが、今では慣れたものだ。迷いなく重ねられた手をそっと握って、その氷のごとき冷たさに、ボスキはぎょっとしてしまった。
    「おい、すげえ冷えてるじゃねえか!」
     ボスキはエスコートする先を、いつもの一人掛けソファではなく、暖炉のそばのロッキングチェアへと変更した。朝晩は冷え込むようになったため、屋敷では日が高くなるまでと日が落ちてからは、暖炉に火を入れているのだ。
    ゆらゆら揺れるチェアに座ると、主人は火の温かさにほっとしたように息をついた。ボスキはすかさず、ブランケットを膝にかけてやる。
    「ありがとう、ボスキ」
    「大したことじゃねえよ。主様が風邪を引いたら大変だからな。それで、なにがあったんだよ?」
     問いながら、ボスキは紅茶の用意をする。右の義手でミスをしないように気をつけているのだろう、慎重な動きだった。
    「向こうでは冷房……室内を涼しくする設備が発達してるって、前に話したことがあるでしょ? 今日、すごく暑くてさ。そのせいか、どこに行っても冷房がガンガンで、寒くて。そういうときに限って、上着は忘れちゃうし」
     電車が寒すぎて耐えられず、途中の駅で降りて帰ってきたのだと、主人は説明した。
    「なるほどな」
     ボスキは得心したという顔で頷いた。彼の主人は、もともと冷房があまり得意ではないのだ。あちらの世界の空調設備について教えてくれたときに彼女がそう言っていたのを、ボスキは覚えていた。屋敷ならば冷房をかけなくても寝苦しくないからと、夏に入って屋敷で夜を過ごすことが増えたことからも、その苦手具合がわかる。
     主人の暮らす世界と比べると、こちらは暑さが穏やからしい。一体あちらはどれだけ暑いのだろうかと、暑さの苦手なボスキは考えるだけで辟易とする。
    「主様、紅茶が入ったぞ。それを飲んで、寛いでいてくれ。俺はフェネスに声をかけてくる」
    「えっ。そんな、いいよ。これを飲んだら一旦帰ってもろもろ済ませてくるから。こっちで入る予定じゃなかったんだし、仕事を増やしたら申し訳ないから……」
     こんなときでも遠慮ばかりの主人に、ボスキは大仰にため息をついた。
    「ダメだ。向こうに戻ったら、どうせシャワーだけで済ませるだろ」
    「うっ……」
    「主様」
     ボスキはチェアの肘置きに手をついて、ずいと身を乗り出した。幸いというべきか、主人はボスキの顔に弱い。声にも弱い。顔を近づけて囁けば、大抵のことは押し通せてしまう。今、利用しない手はないだろう。
     彼は自分の容姿の美醜に頓着するほうではなかったが、自分の顔が主人の好みらしいと知って悪い気はしない。こんな醜い傷のある顔が好きだとは、変わった嗜好だとは思うが。
     声も、低くて聞き取りにくいばかりだと思っていたが、彼女がいい声だとやたらに褒めるので、近ごろはこの声でよかったと思うようになっていた。
    「外と室内の温度差で、体は相当疲れているはずだ。こんなに冷えているんだから、ちゃんと温まらないと体調を崩すぞ。まあ、それならそれで、俺がつきっきりで看病するだけだが……風呂、入るよな? それとも俺が入れてやろうか?」
    「自分ではいります!」
    「よし」
     言質をとって体を離す。主人は目元を朱に染めていた。可愛らしいことだと、ボスキはふっと笑みを落とした。
    「……少しは温まったみたいだな」
     そう言って、手袋をはめた手でするりと頬を撫でる。主人は耳から首筋までをパッと赤らめて、ブランケットを引き上げて顔を隠してしまった。そんなときでもカップはソーサーに戻しているのだから、律儀というか、なんというか。
     さて。フェネスに風呂の準備を頼みに行かなければならないが、ボスキとしては、大事なひとの愛らしい様子をもうしばらく眺めていたい気分だった。
     放置されたティーカップから湯気が消えていることに気づいて、ボスキはにやりと唇の端を上げた。執事として、主人にぬるい紅茶を飲ませるわけにはいかない。いい口実が見つかった。彼は先ほど同様、慎重に紅茶の準備をしながら、考える。
     ブランケットに隠れてしまった主人に出てきてもらうには、どうしたらいいだろう。せっかく一緒にいられるのだから、顔が見たい。
     もちろん笑った顔が一番素敵だが、彼女の照れた顔も、怒った顔も、泣いている顔でさえ、見逃したくはない。ましてや今は、ボスキのせいで可愛い顔をしているに違いないのだから。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
    1511

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    住めば都

    DONEあくねこ、ハナマル夢(?)
    ※本編2.5章、水龍の唄、ワインフェスティバルの内容に触れています。
    時系列的にはワインフェスティバル8話のあと。イベストを読み返していて感じたことをこねこねしました。捏造過多です。
    独白なので夢と言っていいものかわかりませんが、考えているのは主様のことなので一応夢ということにしておきたい。
    ないものねだり 宛てがわれた宿の一室でベッドに身を横たえたハナマルは、酒精が入ったわりに冴えてしまった目で、ぼうっと天井を眺めた。ついと利き手を天に伸ばす。緩く拳を握ると、掴んでおきたかった大事なものの記憶が脳裏を駆け抜けた。
     感傷的な気分になっているのは、ルカスを相手に過去の話をしたからだろう。まさか中央の大地に、燃え尽きた郷里のことを知っている人間がいるとは思わなかった。
    「百年経てば、か……」
     刺青を消したいと相談したハナマルに、刻まれた印は消えずとも人々の記憶のほうが風化すると、ルカスは言った。確かにそうだとハナマルも思った。
     だが、背に負った龍の意味を知るものがいなくなるのにそれだけ年月がかかるのだとすれば、彼が唯一と定めた主人がハナマルの出自を知る日が、いずれやってくるかもしれない。
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