このバイトをはじめてもう二年が経とうとしていた。誰かをもてなすことや喜ばせることは嫌いでなかったし、この容姿を生かしてほんの僅かな時間働くだけでそれなりの収入が得られるのはよかったと思う。しかし、女の理想に合わせて何度も何度も自分を作り変えるのは苦しいものがあった。
そうしている間に虎於の心は確かに擦り減って限界を迎えていた。理想を求めるがあまり怒鳴ってくる女や、肉体関係を強いてくる女もいた。
客足が絶えたら辞めようと考えていたが、そんな気配を見せるはずもなく、辞めるタイミングを見失ってしまっていた。
そんなある日、数ある新規客の中から変わったカウンセリングシートが送られて来ていて、いつもよりも丁寧に読んでしまった。
5675