穴があったら入りたい 指先が触れたのは、隣に座る彼の手の甲だった。
肌理は年齢相応に荒くかさついていて、暁人が何気なく指をすべらせると、人肌特有の滑らかさとともに、はっきりとしたざらつきを感じた。力をこめるとわずかにへこむ皮膚は分厚く硬い。熱い緑茶の入った湯呑みを平然とわしづかみにしていた彼の姿を思いだし、なるほどこの樹皮のように厚い皮膚があるから平気だったのかと、改めて深く納得した。
新たな発見にすっかり気を良くした暁人は、血管が浮いた手の甲をさらに先へとたどり、がっしりとした太い指を撫でた。彼がこなしてきた力仕事の数々を思わせる、ごつごつと存在感のある関節の山をふたつ越え、真冬でもないのにちくちくと目立つ逆剥けを通りすぎれば、これまでとは違うつるりとした感触に行き当たった。爪だ。しかし、やはりそこも完全に滑らかとはいえず、わずかなでこぼこを指先に感じた。
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