伊地知潔高の秘密秘密、秘密、それは秘密。
「あら、伊地知さん。おはよう」
「おはようございます」
「これからお仕事?」
「ええ」
「葬儀屋さんも大変ねぇ。いつ仕事が入るかわからないものね」
「そうですね。でも、もう慣れましたよ」
では、いってきますと言って、伊地知潔高は隣人に別れを告げた。葬儀会社で働いているサラリーマンの伊地知さん、お隣の奥さんはそう思っている。呪術高専の補助監督の仕事をしていることは、お隣さんには秘密だ。
高専に着くと、自分のデスクでいつものようにお仕事開始。今日はまずは、窓から呪霊発生の報告があったトンネルを、一時的に閉鎖するために、国土交通省に提出する申請書類を作成する。内壁の修復工事をするという名目で、一般車両を通行止めにするためだ。呪霊が発生して、それを呪術師が祓うため、とは言えない。それは世間には秘密だ。
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