やっぱり愛してる「HiMERUどうした今日は、なんか調子悪そうだぞ」
ツアーに向けたレッスン中、ダブルセンターのみのパフォーマンスを仕上げている最中のこと。いつもなら一回目の合わせの時点でほぼ完ぺきに仕上げてきて、燐音やほかのメンバーへ指導を行う彼が、なかなかふりを合わせられていない。
「いえ、何にもないのです大丈夫ですから、すみませんもう一度最初から」
全身汗にまみれ、肩で息をしているのがどう大丈夫なのか。
「もうやめにしようぜ、きりがない」
「まだやれます、いつも完璧でないといけないから、だからお願いします」
「わかった、これはリーダーからの命令だ、今日はもう休め、何を抱えてるのか知らないが今のお前では何も完成させられない」
そんなのはわかっている、でもそれは自分が許さない。
「なぁ、それじゃあいまから飯食いに行こう、話を聞かせろ」
「話すことなんてないのです」
そう言って視線をそらした。
どのくらい時間が経ったのだろう、やはりうまくいかないところがでる、天城は何もすることなく壁にもたれてこちらを見ている、鋭い視線で。
「もうやめろ、いますぐに」
普段の彼からは想像できない厳しい声に動きが止まった。
「多分自覚はあると思うが、右足の足首がおかしい、このままではケガするぞ」
従いたくないが、ここで意地を張ってしまうときっと彼は強硬手段に出るだろう。
「わかり、ました」
正直悔しかった、限界でやめどころがわからなくて意地になっていたから。
ピタッ
「ひっ」
突然感じた首筋の冷たい感触に変な声が出てしまった。
「メルメルー、頑張り屋さんなのはみ~んな知ってるぜ。だけどな、過ぎたるは、及ばざるがごとしって、賢いお前ならわかるだろ。」
ペットボトルを受け取ると、右側に立って肩を貸してくれ、ベンチまで誘導された。
ミネラルウォーターがのどを滑り降りて少し気持ちも冷える。
「昨日、猫が、飛び出した猫が道路の真ん中でうろうろしていて、助けに行ったら車が近くて、よけたときに痛めたみたいです」
プロ失格ですね。
「それも聞いてたよ、でも言ってくれるのを待ってた。ようやく教えてくれたな。」
その優しさはとても大切なものだから、失くすんじゃねえぞ。
髪をかき混ぜられて、ファサとタオルをかけられ、肩を抱き寄せられたら安心して。
「まだしばらく時間はあるから、ここでゆっくりしようぜ」
何て優しく言われてしまうと、こらえてきた涙があふれてきた。
やっぱりこの人にはかなわない。