転生してみたら女の子になってた公子の話出会う話
はぁ、と吐き出した息が澄んだ空に吸い込まれる。少し前まで激しい痛みと熱さを発していた腹は既に感覚はなく、ただ今はもう寒いな、と掠れゆく意識の中で思った。辛うじて見えている片目を、腹の方に向けてみるが、頭を動かすことが出来ないせいでどんな状態なのかは確認することは出来ない。が、傷口を抑えている手の感触から、溢れてくる血液の勢いが弱くなっているのを感じ、もう自分にあまり時間が残されて居ないことを理解した。
(後悔は、ない)
そんなもの、あるわけない。
闘争に生き、そればかりを追いかけてきたのだ。むしろ、戦場で死ねることは、予想もしていたし、願ってもいた。最後まで思う存分、己の力を振るい続けることが出来たのだ。こんな幸せなことなどない。あぁなんて楽しい人生だったんだ…!そう、本当は大声を上げたかったが、肺に穴が空いているせいでそれは叶わないので、かわりに緩く唇に笑みを刻んだ瞬間、込み上げてきた血液に咳き込んでしまった。
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