Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    岩藤美流

    @vialif13

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 100

    岩藤美流

    ☆quiet follow

    これはダイナミック夢オチのえっちな話になる予定だった話

    夢見の雫と、 イデアは「夢見の雫」と呼ぶらしい、その虹色をした涙型のカプセルを指に持ち、まじまじと眺めていた。ぱっと見では尖っているように見える先端も丸みは有るから、飲んでも危険ではないとは思うけれど、この色はなんだ。よく言えばオパールのような、悪く言えばシャボン玉の表面のような色をしたソレを、口に入れることにまず勇気がいる。こんな物を飲んでも大丈夫なのか。まあ魔法に満ちたツイステッドワンダーランド、割となんでもありだけど……。イデアはそんなことを一人考えながら、そのカプセルを見つめている。
     自室はもう眠る準備をしていて薄暗いが、彼にしては珍しく22時に就寝の準備を整えているし、談話室ではオルトは既に充電に入っておりスリープ中だ。部屋の扉には「面会謝絶」の汚い字をコピー用紙に書いて貼っておいたから、サーバーがシャットダウンしたとかじゃないと起こすのは許さないし、そういう要件なら僕を再起動してねとオルトが追記もしてある。つまり、イデアは今日、本気で眠るつもりだったのだ。



     そもそもソシャゲやオンラインゲームのイベントが重なり、ただでさえ睡眠不足だったイデアが更に徹夜を重ねてしまったのは、とある寮生のパソコンが壊れたことから始まった。イグニハイド寮にしては珍しく機械にあまり強くない彼は、「何もしてないのに壊れたんです」という決まり文句を漏らしたが、事実、恐らく何もしてないのに壊れたようだった。経年劣化のようなもので、妙に古いソレは動かなくなってしまっていた。買い換えた方が早いですぞこれは、と言うイデアに、彼は涙ぐんで答えたのだ。
     うちは貧乏で、それにこれは亡くなった父が誕生日プレゼントに買ってくれたもので、大切な写真も入っていて。イデアは「はあぁーーーーー」とそれはそれは大きな溜息を吐いて頭を抱えた。どうして素人というのは大切なデータとやらをバックアップもせずにおくのか。貧乏だっていうのはわかったけれど、この性能では何かと限界がある、フレームはまだ使えるけど中身はどうにかしたらんと……。文句は沢山言った。厭味もめちゃくちゃに言った。しかしイデアは、オルトと共に寝る間を惜しんでそれを復旧したのだった。

    「はあ、なんといいお話でしょう。イデアさんはお優しいんですね。修理料金は高くついたでしょう」
    「それが拙者の部屋に転がってた古い部品とかを使ってキメラ合体したから、まあ別にお金はかからなかったんですわ」
    「イデアさん、そういう時は原価を2割と考えて利益を8割乗せるんですよ。あなたの作業時間もかかっているんですから、いいですか、あなたの頭脳や時間は本当に素晴らしい発明品を作り出せるものなんですから、安請け合いは……」
    「はいはいはい、あーねむ、あー」
     ボードゲーム部の部活に睡眠をとらないまま現れたイデアは、そのままボンヤリした頭でアズールと対戦し、しこたま負けた。あーねむい、あー寝そうと繰り返しながら机に突っ伏しながらも、眠らないし部活に出た理由はイデアにもよくわからない。よくわからないが、出なくてはいけない気がしたのだ。
     アズールは「帰ってお眠りになった方が良いですよ」とは言いながらも追い返しはしなかった。けれど、珍しくボロボロに負けたイデアを見ながら「ふむ」と一つ呟き、懐から小さな小瓶を取り出す。その中には、一粒の虹色のカプセルが入れられていた。
    「これも何かの縁でしょう。勝負に負けた罰ゲームとして、これを今夜服用して下さい」
    「なあにそれ、めっちゃ綺麗ですなあ、本当に飲めるモンなんです?」
     机に突っ伏したままイデアが問うと、アズールはニッコリと微笑んで、丁寧に”商品説明”を始める。
    「それはもちろん。危険な物ではありませんよ。深海の人魚達の間では「夢見の雫」と呼ばれているもので、とある貝の成分でできている薬でして」
    「へー……?」
    「自分の望んでいる心地良い夢を見ながらぐっすり眠れるという素晴らしい薬でして、深海でも珍しく高値で取引されているんです。陸の人間にも安全で効果が有ることは、既に研究されているから安心してください。だから、これを飲んで感想を聞かせてもらえませんか? それを対価としましょう」
     つまり実験台ってことっすな~。と回らない頭で呟きつつ手のひらを出すと、そっと瓶が置かれた。宝石にも見えるそれがころりと瓶の中で動く。綺麗っすな、と漏らして、それからこれを飲むのかあ、とも続ける。綺麗ではあるが、お世辞にも食欲が湧く色ではない。
    「あなたのお好きな知育菓子だと思えば飲めるでしょう」
    「うは、そうきますか、なるほどね……。わかった、わかったよ、罰ゲームは絶対、ってね」
     今夜飲んで、次の部活で感想言いますわ~。そう答えるうちにも欠伸が出る。あかん、これは完全に電源切れちゃいます、とブツブツ言っていたものだから、アズールが「そうでもしなきゃあなた、飲まないでしょうし」と呟いたのは聞き取れなかった。



     時は戻って寝室である。イデアはその「夢見の雫」を見ながら、ぼんやりしていた。
     眠すぎて頭が働かないのだ。先程シャワーをする時鏡を見たけれど、エグいクマができていたし。飲まなきゃなあ、寝なきゃなあ、と思いつつ、眠すぎて頭が働かずなかなか動けない。
     そもそもイデアが眠るのを好まないのは、実を言うとあまり夢見が良くないからである。
     子供の頃からそうだったのだけれど、毎晩のようによくない夢を見る。それは荒唐無稽なものであったり、現実のことだったり、現実であるかのようなまさに悪夢だったりしたけれど。睡眠が浅いのか、イデアはよくうなされた。睡眠が足りなくなるほど起きていれば、身体が眠ろうとするからグッスリ眠って夢も見ないのだけれど。イデアは”いい夢”という物を殆ど見たことがなかったのだ。
    (夢、って言葉自体がポジティブの塊みたいなのも面白いっすよな、しょーもない内容ばっかりなのに、まあ目が覚めるようなモンだから昔の人も夢と希望を一緒くたにしたんかな……あかんねむい、ねむ……)
     うとうとし始めて、イデアは一つ溜息を吐き出すと、意を決しそのカプセルをぽいと口に放り込み、水を流し込むとそのままずるずるベッドに移動する。
     薬を飲んだばかりで横になっちゃダメだよ、とオルトがいたなら言われそうなものだ。イデアはしかし、もう一刻の猶予も無いほど眠くなっていた。布団の上に横になると、そのまま溶けていきそうだった。とろとろと意識が薄れていく中、ぼんやりと考える。
     いい夢ってなんだろうな、アズール氏の、夢、とかかな……。
     だったらいいな。そう思うだけで妙に幸せな心地になって、イデアは思わず笑みを浮かべると、そのまま眠りの世界へと落ちて行った。



     
    「イデアさん、イデアさん」
    「ふえ……?」
     眼を開くと、目の前にアズールの姿が有った。いつものようにきっちりと制服を身に着けた彼が、自分の上に、おまけにすぐそばにいる。ひぇ、と悲鳴を漏らしてから、どうしてここに? と素朴な疑問を言葉にする。アズールは「どうしてとは随分ですねえ」と言いながらも、優しくイデアの頬を撫でた。
    「恋人なんですから、夜を共にするのは当然のことでしょう?」
    「こい、びと……?」
    「そうですよ。僕とあなたは恋人同士……そんなことも忘れてしまったんですか? ひどい人だ」
     そう、だったっけ。僕とアズール氏は恋人同士……だったっけ? 少し考えてから、ああこれは夢だった、とてもいい夢、だからアズール氏との幸せな夢を見てるんだ、と納得する。しかし酷く頭がぼんやりして極度に眠い時のような感じがするから、これが夢のようには思えなかった。まるで現実のようにリアルなアズールが、ベッドに横たわったイデアの上に乗っている。その温もりも、アズールのコロンの香りも感じられるものだから、ますます夢だか現実だかわからなくなる。
     でも、これってすごいことじゃん。ぼんやりした頭でそう思う。だって、まだ好きって伝えてないしこれからも伝える予定なんて無いけど、もう僕達は恋人同士のハッピーエンドに辿り着けてるってことでしょ。素晴らしい夢なんだから、乗っかるしかない。イデアはおずおずとアズールに手を伸ばし、その背中を抱く。ずっとこうするのが夢だった、いや、事実夢なのだけれども。
    「イデアさん、僕のこと好きですか?」
    「う、ん、……好き……」
     なんだこの問答は、少女漫画じゃあるまいし。顔が自然と熱くなる。恥ずかしくて仕方がないが、まあ夢なんだから恥をかいても大したダメージも無い。せっかくなら、思いっきり堪能しよう。どうせ一晩の幻なのだから。
    「アズール氏、好き……好き……もっと抱きしめてくれる……?」
    「おやおや、甘えん坊さんですね。もちろん構いませんよ。でも、もっと色んなことをしたくないですか?」
     色んなことってなんだ。随分積極的なアズール氏だなあ……。でもアズール氏ならこんなもんか。
     イデアがそんなことを考えている間に、アズールの顔が近づいてくる。あ、これキスだ。理解して胸が高鳴った。思わずぎゅっと目を瞑ると、閉じた唇に温かいものが「ふに」と触れる。柔らかい。これが、キスなのか。したことないから知らないけど。
     アズールは啄むようにキスを繰り返してくる。その度に息を止めて唇を合わせているだけでは物足りなくなった。もっと、と応えるようにイデアもアズールのキスを受け入れて、互いに唇を重ねる。気持ちいい、もっと、と思ったのがわかるらしく、アズールは何度も何度も飽きもせずにキスを落とす。
    「ん、ん……っ!」
     何度目かに、舌先で唇の隙間をつつかれた。思わず僅かに口を開くと、アズールの温かい舌がぬるりと入り込んでくる。少し驚いたけれど、嫌悪感などはなくてイデアはそれをわけもわからず受け入れた。
     角度を変えながら丁寧に口内を撫でられると何ともいえず蕩けていきそうに気持ちいい。うっとりしながらも、息苦しさに眉を寄せ、キスの合間に「は」と呼吸する。アズールが「鼻で息をするんですよ」と優しく教えてくれた。
     だってそれではアズールに鼻息が当たってしまうかもしれないし、それなら苦しいほうがいいような、だって気持ちいいし、ああでも苦しい。
     イデアはそんなことを考えながら、アズールを受け入れ続けた。その間にもアズールがイデアの身体を撫でている。愛撫、という言葉はイデアの頭には思い浮かばなくて、「なんだか映画のラブシーンみたいでアズール氏はえっち」と思う。
     その対象が自分であることは役得だが、有り得ないことだ。あの誰よりも努力と形にこだわる男ならきっとこんな風に好きな人とキスをするだろうという僕の妄想だ。そう考えると少し胸が苦しくなった。いい夢なのに、切なくなるなんて良くない。夢は夢とわからないほうが幸せだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍆😭👏❤👏🙏🙏😭👏🙏👏❤❤❤😭🙏🙏🙏💯💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    お題「HELIOS∞CHANNEL」
    何度も何度も震えるスマホ、画面も何度も光って、最早充電も尽きかけてしまっている。
    鳴り止まなくなって電源ごと落としてしまうのも日常茶飯事ではあるけれど、今回は規模が違う。
    ……今朝おチビちゃんが撮ってエリチャンにアップロードした写真がバズっている。
    その写真は新しく4人の体制となったウエストセクターで撮ったもので……それだけでも話題性があるのは確かだけれど、それよりもっとややこしいことでバズってしまった。

    『フェイスくん、この首の赤いのどうしたの!?』
    『これってキスマーク……。』
    『本当に!?どこの女がこんなこと、』

    「はぁ〜……。」

    止まらない文字の洪水に、思わず元凶である自分の首を撫でさする。
    タグ付けをされたことによる拡散の通知に混じって、彼女たちからの講義の連絡も合わさって、スマホは混乱するようにひっきりなしに泣き喚いてる。
    いつもはなるべく気をつけているからこんなこと滅多にない。……ただ、昨夜共に過ごした女の子とはまだ出会ったばかり……信じて寝入っている間にやられてしまったらしい。
    今日はタワーから出るつもりがないから別にそのマークを晒していてもわざわざ突っ込んでくる 2313

    h‘|ッЛ

    DONE #しん風版深夜の60分一本勝負
    お題「放課後」

    遅刻!ワンライ+20分!

    何度書いてもくっつく話は良いよねぇ...
    しん風しか勝たん...マジで...

    ※誤字に気づいて途中修正入るかもかもです。

    ⚠️アテンション
    高校生未来パロ。
    同じ学校通ってる。
    最初付き合ってない。

    3 2 1 どぞ
    しん風ワンライ『放課後の告白』

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    西陽の射す窓。教室から溢れ出る紅に染る廊下。笑い声や掛け声が重なり心地よく耳を掠めていく。
    一般生徒の最終下校のチャイムまであとわずか。

    委員会の集まりが長引き、担当教員に頼まれて資料室に資料を置きに行った。ついでに整理まで行った所までは予定通りだった。そこから更に社会科教師に捕まり、今日提出だった課題を社会科教室前の箱から持ってくることを頼まれ、更にそれを名簿に纏めあげた。あろうことか最後に教頭に捕まって長話に付き合わされてしまった。

    今日もしんのすけと帰る予定だった。社会科教師に捕まった時点でしんのすけには先に帰っていいと連絡した。本当はしんのすけと帰れたのに。きっとしんのすけはモテるから、そこらのJKに絡まれて流されて一緒に帰ってしまったんだろう。

    アイツの隣は僕のものなのに――

    鞄は教室に置いてきた。しんのすけとは教室で待ち合わせていた。明日アイツに彼女が出来てたら、僕はどんな顔をするだろう。泣くか怒るかそれとも笑うか。こんな思いをするなら先に帰っていいなんて言わなきゃ良かったんだ。僕の心はなんて狭く 2725