ゲンガクセレナード·第一楽章俺にとってヴィオラはいつも傍にあるもので、弾く事も風呂に入るのと同じように日常的に行う動作のひとつだった。
いつ、どういう理由で始めたのかも分からないくらい幼い頃から共に生きてきた相棒。
そんな相棒といつしか共に世界中で演奏したい、というのが俺の夢になり、あと一歩のところまできていた。
が、それは父親が事業に失敗した事で幻となった。
決まっていた音大への進学も学費が払えないという事で白紙となり、俺は今まで俺の為に投資してくれた両親の為、少しでも役に立ちたいと思い就職する事を決意した。
ずっと一緒に生きていくと思っていた相棒とも別れなければならないのだと思いながら迎えた高校最後の定期演奏会。
そこで俺は、その後の人生に繋がる大きな出会いをした。
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