君に贈るは紫色 目が覚める。自分が身を沈めていたベッドの隣を見れば新がいる。それは、同居してから何一つ変わらない当たり前と化した光景。
だが目の前の新はもう甘えん坊じゃない。真の後ろをずっとくっついている訳ではなく、一人で行きたい場所へ行ける。言って欲しい言葉じゃなくて、新が思った事を本人が直接言えるのだ。
ここは自分が望んだ新しい優しい世界だから。
じっと寝顔を眺め続ける。これが他の人間なら寝顔をわざわざ見ようなんて気持ちにすらならないだろう。新だから、飽きもせず見続けられる。何回心地よく胸を上下させるか数えるだけでも、ひどく楽しい。
正直一生見ていられる気がするが、あと五分経ったらコーヒーを淹れに行こう。冷蔵庫にサラダを用意して、昨日一緒に買ったパン屋の食パンに乗せる目玉焼きとベーコンを焼き上げて。新はもう覚えていないけれど、沢山我慢させてしまった分美味しいものを食べさせてあげたい。
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