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    NanChicken

    @NanChicken

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    NanChicken

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    結局らくがき漫画にして上げたたぬ歌まんがの元にしたSSを供養
    文章のほうがセリフいっぱい入れられるところがメリットだねぇ

    #刀剣乱腐
    swordCorruption
    #たぬ歌

    「ったく、ついてねぇ。追いつかれるぞ」
    本丸への転送ポイントまでもうあと少しというところで、同田貫は来し方の空を振り仰いだ。天空まで立ち上がり広がった鉄床雲の先からゴロゴロと響く重低音は、雨の到来を告げている。
    「お前さんがが寄り道なんぞするからだろ歌仙」
    言われた方は平然として
    「あの店のは絶品なんだよ」
    と応えた。
    あっさり済むはずの短い遠征。夕立の前に帰れる筈だった。
    ポツ、ポツ、と地面に染みが描かれる。
    「ああ、もう来やがった」
    みるみる強くなる降りに、ふたりは急いで大樹の木陰に逃げ込んだ。通り雨ならばいずれ上がるだろう。
    歌仙の手の内には、竹皮で包まれた硬豆腐。江戸への遠征の帰り道、これまでも時折食卓に上ってきたそれは、豆腐にしてはしっかりした歯応えを持つ、古いタイプの食材だった。
    「戻ったら、木の芽の味噌で田楽にしようか。君の好物だろう?」
    「呑気なもんだな」
    そういえばいい酒もあったな、と同田貫が思った刹那、閃光で周りが真っ白になった。
    落雷か?慌てた瞬間に目に焼き付いた見覚えあるシルエット…敵大太刀それは確かに歌仙のすぐ向こう側に立っていた。
    瞬時に眩さは去り、暗反応で一瞬何も見えなくなる。
    背筋に流れるのは汗か。
    「歌仙下がれ!」
    まさか、こんな場所に検非違使が?あの雷で?
    混乱したまま、自分の後ろへ隠すように歌仙の手を引く。それから同田貫は矢のように雨の中へ飛び出した。
    大太刀の射程は広い。奴の懐に飛び込まねば、同田貫の刃は届かない。敵はこちらを見定めると長大な刃を横に払った。暴風のような最初の一撃をぎりぎりのところで躱した同田貫を迎え討つべく、大太刀はふたたび大きく振りかぶった。その時、隙が、見えた。
    「チェストォーッ!!!!」
    叫びを突いて、ブンっと何かが耳元を掠める。
    バチャーン!!
    聞いたことのない湿った重量感のある音が響き渡り、大太刀が動きを止めた。
    「??」
    後ろへ一歩、後ずさった敵の顔面を覆う白いもの…
    その正体が豆腐と気づいたのは、同田貫に首を斬り落とされた巨体が、雨に溶ける様に掻き消えたあとのことだった。
    「せっかくの僕らのデートの邪魔をしようとは!無礼者め!!!今夜の楽しみも消えてしまったではないか…」
    本丸一の投石の名手は、その豪腕で、持っていた土産を武器に使ってしまったのだった。
    結局大太刀以外の敵は現れなかった。
    よほど悔しかったらしく、帰り道でぶつくさ文句を言いながら歩く歌仙は、今にも泣きそうに見えた。こうなると面倒くさい。
    「あー…なんだ、お前、デートのつもりであちこち寄り道してたのかよ」
    「一緒に出る機会なんてほとんどないだろう。君は非番も道場で稽古に忙しい」
    そう言う歌仙の爪の間には、まだ白いものが残っていた。
    同田貫はそっとその手を取り、マフラーの先で適当に拭ってやったあとで、ゆっくりと握り直した。手を引くと愚痴をやめて素直に付いてくる。
    …やべぇ。可愛いじゃねぇか。
    同田貫は弛んだ口元を見られないように、先に立って歩く。
    次の非番にどっか連れ出してやるか…
    本丸につく頃には、空は茜色に染まっていたのだった。
    (おしまい)
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    Replies from the creator

    NanChicken

    MOURNING手入れバグ回の、漫画にならなかった部分の切り落とし詰め合わせ供養。単純に時系列で並べ直してあります
    いつかの遅刻組本丸
    審神者がいます
    文章の切れっぱしを単純に時系列にしただけで、小説にもなっていませんが、漫画の前後のことが入ってます。読まなくても良いあれこれ。
    ある数日間の余録審神者は決して大人しく泣き寝入りする男ではなかった。かつて、この本丸への途絶したルートを、力づくで再開通させた男である。
    一報を入れた古今伝授には、「すぐ修理させるから歌仙の身体の安全を確保しろ」と伝えた後、政府の設備管理サポートを行う部署へ猛然と食って掛かった。
    決して安くはないコストを負担して、他の本丸ではそうそう受け入れないという政府純正の定期メンテナンスを受けてきた。このトラブルの少し前にも保守点検が行われ、完了報告を受け取っているのだ。
    「とにかく一番腕の立つ技師を寄越してください。ボンクラは要らない。前回のメンテでどこか狂ったのは明らかでしょう。
    大事な初期刀を失うような事態が、政府の手落ちで起こるなんてことが許されるはずもない。我々審神者は軍属とはいえ一国一城の主。国家賠償の訴訟も辞さないつもりでおりますが?」
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