ただただ見たいやつ「君はとても秩序に忠実であると聞くよ。ならば、ここで優先するべきはなにか分かるだろう?」
「ダメだっ、ドドゲザン…!!こんな奴の話なんて聞かなくて良い!!!」
ギリリ、と自分を抑えつけるポケモンの太い腕に力が入る。
押し潰されたは肺からなんとか息を吐き出して、殺意を立ち上らせている相棒に声を掛ける。
「今すぐここから立ち去れドドゲザン!!皆の所にっ…もう、どこでもいいから、逃げろ!!…っぐ、ぅ、」
「騒がしいトレーナーだな。彼はあんなに寡黙であるというのに」
地面に押し付けられた頭がメリメリと鳴ったように感じたが、ピーニャにはそんな些末なことに構っている余裕はなかった。
「どど、げざん、」
「さあ、パルデアの勇ましい武人。忠義を尽くして主人を救った方が良いんじゃないか?…人間は君たちよりもよほど脆いんだ」
厭らしい男の言葉にドドゲザンが低く唸る。
その声が今にも噴き出しそうな怒りを抱えていることは、ピーニャには痛いほど分かった。
駄目だ。駄目だドドゲザン。
キミが連れて行かれたら、自分が助かったってなんの意味もない。
「ほら、まずは後生大事にキミのボールを持っていたその手から壊してみようか?」
がしりと筋で覆われた掌がピーニャの手首を掴む。
「っ、」
一瞬息を詰めたピーニャは、それでも真っ直ぐにドドゲザンを見て口を開いた。
「大丈夫…キミがいれば、大丈夫だから」
怒りで我を忘れかけているドドゲザンに、いつものように話しかける。
「信じてるから」
だから、今は。
カチリ、と震えたドドゲザンの皮膚が鳴る。
「……ボクの言う事を聞け!ドドゲザン!!!」
辺りの空気を震わせるようなピーニャの声に、ドドゲザンの刃が共鳴するように鳴いた。
みたいなやつ!!