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    リノリウム

    @lilinoleilil

    ごった混ぜ
    🐺🦇ですが深く考えないほうがよい

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    リノリウム

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    🐺と🦇がバッチバチに魔族バトルしている。喧嘩じゃないよ。欲情もそこまでしてない。
    バトル描写の練習。まだ本気モードに狂ってる。
    (この話の前後にもエピソードがありますが書くかはわからん)

    #MZMart

    バトルしようぜ! 天に映る裂目を目指し、アンジョーはひたすらに宙を蹴りビルの谷間を突っ切って行く。
     一蹴りする度に、黒金色のオブジェが猛スピードで視界へ現われ抜けていく。人とは全く異なる彼のスピードに、風も暴力的なまでに反抗する。頬を撫で付ける風が今やかまいたちのようだ。
     目的地である“空”に一メートルでも近づくため、目にも留まらぬ疾駆を繰り返していると、アンジョーはあるはずのない衝撃が足底から全身へと幾度と突き刺さっていくのを感じた。限りなく狼に近い身体でもその負荷に抗うことは難しい、と頭の片隅で思考する。
     すると突然、裂目を中心に時が一変する。
     緞帳が一気に下ろされると、空一面が真っ赤に染まり、この世の一切が静止した。たった一フレームだけ切り取られたかのように、車道を走る車も人の息遣いもタバコを燻らす炎でさえも、何もかもが凍りつき営むことを止めていた。
     ビルの屋上へ一旦留まり、誰よりも利く鼻に全神経を集中させる。だが、辺りを包む空気が異質だということしか分からず、アンジョーは顔をしかめずにはいられない。ありとあらゆる知識を総動員させて、現状の理解と打破に集中する。
     ここまで“天地の境”に深く干渉できる奴は誰だ? 悪戯の限度を超えた蛮行を犯す奴は誰だ? あのコーサカを人質に取ってまでここまでする奴は一体誰だ?
     
     間もなくして頭上の裂目かひらり、何者かが軽やかに飛び降りてきた。
    「誰だ!」
    「そうシケた顔すんなって」
     男はおどけた表情で手を振りかざす。ゆっくりと降下し、コンクリートの足場から数センチ浮いたところで静止した。
     隠していても溢れ出る膨大な魔力。血よりも濃く鮮やかな紅のロングヘアー。モノクルの奥から鋭く覗かせる魔眼。男が低く発する一言一句に伴う、抗うことを許されない威圧感。
     男は間違いなく彼で、だが人の世で生きるためにその力を封印すると言い切ったはずの彼。
    「――コーサカ?」
    「…………で、なければどうする」
     あくまでも飄々とした態度を崩さない男に痺れを切らし、アンジョーはぐるると唸り喉の奥を鳴らした。
    「“コーサカ”をどこへやった」
    「そんな簡単に俺が教えると思うか?」
    「あんな分かりやすくくだらない悪戯を仕込んで、俺だけならともかく司くんホームズくん達にまで迷惑をかけて。普段のコーサカなら有り得ねぇって黙っちゃいない。馬鹿でかい声でブチ切れているだろうね」
     アンジョーの掌の中では差出人不明の脅迫状がぐしゃぐしゃに握り潰されており、すっかり原形を留めていなかった。
    「かもな」
    「何時まで他人事のつもりだ。吐かないって言うなら……実力で吐かせる」
     アンジョーの焦燥混じりの宣戦布告に「へぇ」と男がニヤリ口角を上げた。
    「やってみろよ――ジョーさん」
    「黙れ」
     怒りの炎が一瞬にして引火し、アンジョーは目を見開いたまま飛び出していた。言葉を返す隙も与えない。男の懐に瞬く間に飛び込むと、その筋肉隆々とした獣の腕で横っ面を力いっぱい殴打した。
    「くぅ」
     絞り出すような呻き声は轟音に掻き消される。
     防御姿勢を取ることも出来ず隣のビルまで吹っ飛ばされた男は、その凄まじい衝撃の余韻に足元が定まらない。
    「この。待て知らずの駄犬が」
    「“お前”がその名を呼んでいいなんて、許した覚えがなかったからつい」
    「へぇ、アンジョーさんってそんな束縛癖があったんだ。初耳ィ」
     男は体勢を立て直すとすぐに金属の手すりに足をかけ、カン、と宙へ飛び立った。
    「――――面白ぇ、な!」
     ぐんぐんと高度を上げ、赤黒いマントを翼のように大きく広げる。くるりと一回転すると――無数の蝙蝠が男の周りに集っていた。
    「行け、我が僕達よ」
     合図と同時にそれらがすべて射出される。主人の命令に忠実に従う蝙蝠達は弾丸の如き勢いで、ただ一点のみを目指し飛びかかってきた。
     アンジョーが腕を交差させ防御姿勢を取る、のとほぼ同時に、黒い大群が大きな口を開けて襲いかかる。
     飲み込まれる――! と考える間も与えられない。あっという間に内部に取り込まれ、狼男はなすすべも無くその中心で耐え続けるしかなかった。
     体毛を鋼のように硬化させても、蝙蝠どもはその隙間から入り込み、あるものは急所に噛み付こうと歯をカチカチさせ、あるものは声帯を小刻みに震わせ耳を劈くほどの超音波を発している。漆黒の羽撃きが群をなし、全員が大音量で叫び声をあげる。血をよこせ――血をよこせ! 
     皮膚を噛みちぎられ、鼓膜が今にも破られそうな感覚だ。全身に絶えず襲い来る耐え難い苦痛の中で、アンジョーは必死に神経を集中させる。いくら実体を伴っていたところでこいつらは大半があの男の魔力から生み出された傀儡のようなもの。今身体中を襲っているこの痛みも幻覚を見せられているに過ぎない。この暗闇の中心に、こいつらを操るボス個体――微弱ながら魔力を発する、ハブとなる個体がいるはずなのだ。
    「一体どこに……クソっ」
     本物はどこだ。目眩しに、騒音に、痛みに騙されるな。目を閉じ、耳を伏せ、気配だけを探り続ける。
     ――――違和感を感じる程度にささやかな、魔力の発生源がある。二時の方角の、大股で三歩歩いたその先に。
    「見つけた」
     仄かに光るそれを大きな掌で鷲掴みにする。すると、アンジョーを飲み込んでいた黒い塊はたちまちに消えてしまった。
     一気に視界が開け、きょろきょろと辺りを見回す。探せどもあのいけ好かない男はどこにもいない。
    「素晴らしい」
     ほんの数センチ後ろからの囁き声だった。鳥肌が反射的に立つ。いつの間にか、だが完全に背後を取られている。神経をすり減らし疲労しているところを狙われ、気配が完全に読み取れなかった。まずい、とアンジョーは振り返ろうとした。
    「まあ待ちなって、ジョーさん」
     首の付け根に冷たい何かが押しつけられる。吸血鬼という種族なら皆持つ木製の杖。本来なら魔力を安定させるためのサポーターのようなものだが、稀に相手を確実に狩るため、仕込み杖を使い刃を仕舞い隠す武闘派もいるとかいないとか。
     あのコーサカは……果たしてどちらだ? 人間界で楽しく健やかに暮らすため吸血鬼としての一切を捨てた本物の彼から、そのような話を聞いたことがまるでない。神経のすべてを背後に集中させ、アンジョーは恐る恐る尋ねた。
    「…………何が目的なんだ?」
    「アンジョーの持つその力、よ」
     人間の数倍はゆうに超えて発達した腕が、氷よりも冷たい男の指先で小突かれる。
    「力? ……狼男の?」
    「そ。貴方の持つワーウルフの力。誰もが追いつけない脚力。象もぶっ飛ばせるくらいの腕力。数キロ先の同胞の呼び声も聞き逃さない聴力。蝙蝠程度じゃものともしない鋼の体毛。それに……」
     一呼吸おいて、熱狂を潜ませた浮ついた声色で囁かれる。
    「咆吼のような、誰もが振り向く絶唱」
    「――――ッ!」
     恐怖とも興奮とも言い難い激情に襲われ、アンジョーは力任せに腕を振り回したくてたまらなかった。が、自身の首の付け根を狙った杖先は数ミリだけ下ろされ、急所を確実に捉えていることが鮮明にわかる。故に何も出来ず、遣り処のない苛立ちが沸々と込み上げてくる。
    「アンジョーが本来持つ力のすべて。人間のそれより断然圧倒的で、誰もが羨む力。俺だって羨ましいと思っちゃうくらいのソレ!」
     アンジョーの苛立ちを煽ろうとしてか、愉悦を隠そうともせず、演技じみた仰々しい物言いで男は弁舌を続ける。
    「……それを? どうしろと?」
    「いつも控えめの貴方もたまには全力にならないとスッキリしねえんじゃねえの、って思って」
     嬉々とした男の主張を、アンジョーは「ふぅん」と鼻で笑い一蹴した。
    「君がそれ、言っちゃうんだ」
     その瞬間、首を狙う切っ先が僅かに揺れた。
     ――今だ。この好機を逃さない。アンジョーは一歩前にぐっと踏み込み、勢いのまま跳躍し、回し蹴りを後ろから繰り出す。
     男もすぐさま杖を構え直撃こそ免れたが、凄まじい衝撃は防ぎようもなく、ビルの際ぎりぎりまで吹き飛ばされた。
    「その“人ならざる力”を『いらねえ!』って真っ向から否定して、連れの前でこれっぽちも出そうとしない君が? 面白い冗談を言うね」
    「宗旨替えした、と言えば?」
     よろめきながらも体勢を整える男に対し、「それはないよ」とアンジョーは迷いなく首を横に振る。
    「頑固者のコーサカが有り得ない。……本当は何が目的なんだ?」
     目の前にいる男は九割九分コーサカであるだろう。残りの一分の可能性に賭けたとしても、コーサカを攫えるほどの強大な力を持った“あちら側の住人”が、人間界の生活を頭から足先まで楽しむだけの、変わり者でちっぽけな俺達を狙う理由がてんで分からない。粛正の為にわざわざリスクを冒してまでこちらまで攻め入って来るだろうか。……そんな暇人でもないだろう。
     よってこれら一連の蛮行は、コーサカの自作自演と考えるほうが筋が通っている。だが何のために? わかりやすく演技がかっており、こちらに害を加えることが目的でないのは分かるが、一体どうして彼は自ら封じた力を解き放つに至ったのか。
     じろりと睨み付けると、その仕草に惹きつけられたか男の瞳がより鮮やかに染まり、大きく見開かれた。
    「ウソは言っちゃあいねえよ。アンジョー、貴方のワーウルフの力を、あちら側の伝承としてでなく、飲み会の与太話としてでもなく、もっと確かなものとして知りたい」
     パチンと指が鳴らされると一閃、アンジョーの顔面目がけて何かが猛スピードで飛来する。あわや衝突寸前のところで掴み取ると――――これはダーツの矢か?
    「でも誰よりも温厚で、争い自体を無意識で避けるアンジョーさんが、本来の力を解放することなんてまずない。この世の常識ごと天地がひっくり返っても有り得る話じゃあない。ならばどうするか……俺も考えた」
     掌中の矢が霧のごとく消え去ると同時だった。手が届かないほどの眼前にコーサカと、コーサカとコーサカそれから――――数え切れないほどの幻影が現われた。
    「「力ずくでも、マジにさせないと」」
     アンジョーを囲んだ彼らが一斉に唱える。祈りとも呪いともとれる暗示が何重にも折り重なり、アンジョーの理性を飛び越えて本質へと揺さぶりをかける。
    「結局は力対力なもんで。俺らって結構単純よ? 本能的なところで、種族同士の縄張り争いに無関心でいられないように出来てるんだから。貴方の日常を侵すことが、少しだけでもその近道になるなら……己の手の内を明かすのも許容範囲内ではあるさ」
    「ふうん。……わかったよ」
     地面を思い切り踏みしめ、暗示を気合いで振り払う。為すがままの靄がかった思考が幾分か明るくなった。
    「俺のその程度でよければお安い御用だ。でも、約束を反故にされ迷惑をかけた、君の友達に詫びは入れた?」
     車のカタチをした鉄の塊がアンジョー目がけて男の懐から射出される。だがフルパワーの狼男の豪腕で弾き飛ばすにはわけない。次から次へと目標を射貫こうとするそれらを、アンジョーは一つ一つ叩き落としていく。
    「俺達の“力”は人間界にとって脅威にしかならない。彼らと共生するには決して解放してはならない力。タブーを君は犯してる。その代償を払う覚悟はあるの?」
    「代償ねぇ――――そんなもん、安いもんでしょ!」
    「なら、泣いても土下座してももう知らないから、ね!」
     狼の咆吼が空間を覆い尽くすと、その響きの異質さと妖艶さに吸血鬼の男はまたうっとりと瞼を細めた。
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    リノリウム

    DONE※左右とくに定めてませんが製造元は🐺🦇の幻覚を見がち

    もし🐺の日常が🦇ごと全部ひっくり返ったら?
    イマジナリー兄弟回の🦇一歳弟妄想から着想を得ている
    BLかもだいぶあやしい🐺のサイケデリック話ですが、肉体関係あり前提なので_Bタグです。
    とある木曜日のイマジナリー そりゃあ俺だって一人よりは二人のほうがいいと思うさ。
     一人じゃ抱えきれない強烈な不安が目の前にあったとしても、誰かと折半して互いに勇気づけ合えるならどうにか堪えられる。それに同じ楽しみも誰かと共有できるなら、その喜びは何倍にも膨れ上がっていく。
     〝自分ではない誰か〟という存在は何にも代えがたいものだ。かつての狼のコミュニティでは言わずとも当然の共通認識であったし、東京というコンクリートジャングルに出てきてからもその恩恵に何度何度も救われていた。
     コーサカという男が俺にとってのその最たる存在なのは事実だ。何やかんやでずっといちばん近くでつるんでいる。彼を経由して俺自身も知人友人が増えていく。
     そんな毎日が楽しくて仕方ない。刺激に溢れている。飽きる気もしない。それでいて安心して背中を預けられる。感性が一致している。自分の生き様に誠実だ。言葉交わさずとも深く信じている。
    7763

    リノリウム

    DONE #MZMart

    🦇と🐺の二人が心配で仕方ない🎲の話。
    🚬をちょっぴり添えて。情と義に厚い🎲さんは素敵。
    寿命が違う仲良し煩悩組のあれこれ。連作その3。
    ※各々の寿命の設定については完全に捏造。捏造ありきの創作物として大目にみてください。
    リフレイン・メモリー③ それがたとえ定められた運命だったとしても。大切な友をひとりきりで、時の流れに置き去りにすることなんて出来ない。叶わぬのならせめて、側で寄り添わせてくれ。彼の気が済むまでずっと。
     
    ***

     連休を前に街中はどことなく浮き足立ち、華金の酩酊を今かと待ち望む雑踏で大通りが埋め尽くされている。
     そこから一本入った筋に佇む、青いのれんが軒先に吊り下がっている居酒屋。店主とその女房、お手伝いの三人で営むその店は、手頃な値段にもかかわらず料理の味はピカイチで、それらに合う酒も多数取り揃えられている。普段は人通りも少なく静かだが、今日は流石に常連客で賑わっていた。
     誰にも教えたくない、とコーサカが言い切ったその店に呼び出されたのは、司とホームズのお馴染みのメンバー。店内に一角だけ存在するボックス席を三人で囲み、ようやく運ばれてきたビール片手に小気味よく乾杯した。
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