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    創作するメルお兄さん

    @Mel_Sera_XIV

    FF14うちのこ創作
    アレックスとセラフィタという、うさお夫婦の物語+α

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    POIPOI 12

    ※自キャラが冒険者になるまでの生い立ち設定的な、RP小説になります。
    ※捏造設定や、今後のストーリーで明かされる世界設定によっては誤った部分があるかもしれません。

    #FF14うちの子創作
    ff14OurChildCreation

    セラフィタの物語 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     ガレマール国境沿いの辺境の山奥で、10人ばかりの歩兵分隊が壊滅していた。
     倒れているのはいずれも生粋のガレアン族で、下級皇族の子息など、身分が高い特権階級の若者たちばかりである。
     魔導院を出たばかりの彼らは、ぴかぴかの新兵で初任務として派遣されてきた。
     地脈の終結点とされる座標に、新型の魔導装置を設置してくるだけの簡単な作業のはずだった。
     この任務が終われば彼らは後方勤務となり、一生戦場に出ることはなく安全な帝都から机上の戦略論を繰り広げ、最前線へは属州から徴兵した蛮族を投じればいい。
     実際の戦場で功績を挙げずとも、皇室に属する彼らは階級が変わることはない。
     今回の派遣は、いわば現地訓練みたいなもので、出発した時はピクニック気分で浮かれていた。
     目的地を目の前にして、全員が絶命する運命などと知らずに。
     
    「……どうして、おまえが……この蛮族め……」

     まだ無傷の一人が驚愕の表情で目を見開いている。
     その瞳に映っているのは、青白い肌に細身の男の姿だった。
     頭からは兎のような大きな耳が生えている――ヴィナ・ヴィエラ族だ。
     見た目の年齢は16~18歳程度に見えるが、ヴィエラ族の実年齢は外見では全く当てにならない。
     長く艶やかなプラチナブロンドの髪に、少女と見紛うほど美しい中性的な容姿をしていたが。
     口を開けば、低音のハスキーボイスで、嘲笑交じりに罵る。

    「”主”の命令でな、私怨はねえがここで全員消えてもらうぜ。あばよ、クズども!」

    「その剣の紋章は、エリオガバルス家の一門か……。貴様っ、ヴァリス派の手先だな?!ええい!次期皇帝は元老院首席ティトゥス様だ」

    「皇位継承権なんぞ興味ねえよ。ほら、死にたくなきゃさっさと武器を取れ。俺に一騎打ちで勝った者だけが俺を支配できるルールだ」

     その身を包んでいるのは同じ帝国軍の兵装。
     華奢な骨格で細身だが、鍛え上げられた無駄のない筋肉は、歴戦の兵士のようだった。
     非ガレアン族でありながら戦場で功績を挙げて、実力だけで中級士官まで昇進した武人。
     今回は新兵を率いる隊長として、やんごとなき身分の皇子たちの護衛役も兼任している。
     ……はずだったが、その真の指令はこの辺境の地で、彼らを一人残らず『不慮の事故』とし消し去ることだ。
     一方的に奇襲をかけたわけじゃない。
     ひとりひとり、一騎打ちで生存のチャンスは与えてやった。
     必ずしも一対一ではなく、三人がかりでも相手にした。
     ろくに研がれていないなまくらの片手剣で、次々に新兵たちの頭をかち割り撲殺していく。
     そして最後の一人めがけて剣を振り上げた時……ひどいエーテル酔いのような感覚でふらついてしまう。

     脳内に直接流れ込んでくる、音声や映像。――『過去視』だ。
     そこには……ひどく怯えたミコッテ族やアウラ族の幼女の姿が視える。
     まだ年端もいかない幼い少女たちに、目を背けたくなるようなおぞましい虐待を行っている皇族の若者の歪んだ高笑いが、まるでその場にいるようにありありと追体験された。

    「……チッ!胸糞の悪ぃもん視せやがって……ゴミめ。決めたぞ、てめえだけはとびっきり派手に死んでもらうぜ。なあ?」

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     それから数十分後。
     辺境の山中を歩いていた一人の青年が、帝国兵の死体を見つけ顔をしかめた。
     彼の名はアレックス・クリムゾンと言う。
     職業はシャーレアンの研究者だが、帝国との国境沿いという事もありガンブレードを装備していた。
     帝国軍が用いている銃剣とは形状も構造も違う、『グンヒルドの剣』と呼ばれる第三星暦からある古典的な武器だ。
     色白の肌にそばかすを散らした頬、左目の下に古傷がある、銀髪緑目の男。

    「これは……いったいここで何が起きたんだ?」

     経験の浅い新兵のように見えるが、それにしては特注の上等な鎧を着こんでいる。
     全員、鈍器のようなもので殴り殺されているが、特に損傷が激しい遺体がひとつあった。
     頭は破裂したように一撃で木っ端微塵になっており、全身の骨がぐしゃぐしゃにへし折れている。
     人間技とは思えない怪力で破壊しつくされており、大型の獣に蹂躙されたかのようだ。
     しかし獣の牙や爪の痕跡はなく、小さな足跡だけが山道の奥へと続いている。
     こんな犯行が可能な人間がいるのか?いったいどんな方法で?
     警戒しながら兵士の遺体に手をかざすと、眩暈のような感覚と共に先刻起こった出来事が幻視される。
     『超える力』と呼ばれる特殊な力で、言葉、心、時間などの壁を超え、視ることができるというもの。
     自分の意志でコントロールすることは非常に難しいが、貴重な情報を的確に教えてくれる。
     
    「いけない……!今すぐ彼を止めなくては……」

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

    「さてと、仕上げ……だな」

     帝国軍の兵装に身を包んだヴィエラの男に課された指令は、暗殺だけではなかった。
     指定された地点に、この魔導装置を設置して起動しなくてはいけない。
     これが一体なんの装置で、どういう効果があるのか説明はなかった。
     ただ、本能的に嫌な気配がする……あまりよくないものだという勘だけは働いた。
     作業を終わらせたらとっとと撤退することにしよう。
     装置のボタンに指を伸ばした時、大声で呼び止められた。

    「その機械を起動してはいけない!!今すぐにそこから離れるんだ!!」

     その声に振り向くと、そいつは自分と同じヴィナ・ヴィエラ族だった。
     ふさふさとした毛並みの、垂れた大きな耳が特徴的。
     ヴィエラ族自体、ダルマスカ地方以外で見かけることは珍しく、さらに驚いた事に男だ。
     ヴィエラの8割程度は女だと言われ、男のヴィエラは非常に希少。

    「へえ。おもしれえな、てめえ。……まさか俺と同族の男とこんなところで遭うとは思わなかったぜ」

    「いいから、その装置から手を離して、こっちへ来るんだ……」

    「おまえ、この装置が何か知ってんのか?」

    「わからない。だがおおよその想像はつく。それは非常に危険なモノだ……絶対に起動してはいけない。キミだって無事では済まないよ」

     ここが地脈の終結点である事。
     装置の外観から、エーテルに影響を与える何らかの機械である事。
     この座標があるこの場所は、第四星暦の宗教的な遺構で、強力な蛮神信仰の地でもあった。
     起動ボタンを押せば、信仰心のない者でも強制的に神降ろしされてしまう可能性がある。
     シャーレアンの研究者であるアレックスは、自分の持つ知識からそれが極めて危険だと判断した。

    「止めたくば、この俺と一騎打ちしろよ!てめえが勝ったら装置は渡してやるし、俺のことも好きにしていいぜ」

    「何を言って……」

     帝国兵のヴィエラは、なまくらの片手剣をぶん投げて牽制し、その一瞬の隙に間合いに飛び込んできた。
     速い……!
     手入れのされていない剣を見た時に察したが、やはりこの男の主な戦闘方法は素手による格闘術だ。
     アラミゴでモンクと呼ばれる僧兵によく似た身のこなし。
     俊敏な動きで翻弄し、強力な一撃で必殺の攻撃力を出す。
     モンクの武器は己の肉体そのものだ。チャクラと呼ばれる特殊なエーテルを使う事で、人体の常識を超えた身体能力を発揮する。
     この華奢で細身の肉体のどこからその怪力が生み出されるのか、まるで巨大な熊とでも戦っているような気分だ。
     先刻に見た激しく破壊されつくされた遺体を思い出し、背筋がゾッと凍り付く。
     アレックスのガンブレードは銃と剣の両方の利点があるが、だからこそ弱点もある。
     間合いを詰めた超近距離の戦闘では、魔弾を発射できず、普通の剣に比べれば重く邪魔なパーツも多い。
     しばらく防御に徹しながら、反撃の隙をうかがった。
     アレックスは機を逃さず、爆発的にブレードを振動させ切断力を高め、斬り込む。
     生身でその攻撃を受ければ瀕死の重傷を負うと判断した帝国兵は、素早く地面に落ちていた片手剣を拾い上げ、その刀身でガンブレードを受け止めた。
     片手剣は手入れもされておらず錆び付いているが、皇族が使うようなずいぶんと上等な名剣のようで紋章が刻印されている。
     刃と刃がぶつかる激しい金属音が鼓膜を振るわせた。
     剣に刻印された紋章を目にした途端に、酷い眩暈と共に目の前の男の半生が、まるで走馬灯のように流れ込んできた。
     それは相手も同じようで、頭を抱えながらうずくまり、苦しんでいる。
     何の因果か、同じヴィエラ族で、同じ特殊能力を持つ者が、同じ場所で出会った。

    「うっ……超越技術研究所……?キミのその力は、生来のものではなく、人体実験で得たものだったのか」

    「黙れ……ッ、俺の過去を視るんじゃねえ!とっととくたばれよ、クズ!」

     過去を視られたことに狼狽え、激昂して飛び込んでくる。
     さっきよりも激しい猛攻撃の連続だが、感情の昂ぶりからか技の精彩を欠いている。
     振り上げられた拳を紙一重で躱し、そのわき腹にガンブレードの一撃を食らわせた。

    「ぐっ……うぅ……」

     ついに帝国兵は白目を剥いて倒れ込んだ。
     殺してはいない、峰打ちだ。

       ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

     しばらく気絶した後、うっすら目を開くと頭上に、巨大な石造りの像があった。
     雨で風化しているが、女神か天使の彫像に見える。

    「気がついたかい。……あの装置ならとっくに回収したよ。シャーレアンに持ち帰って詳細に分析させてもらう」

    「ハハハッ!俺に力で勝るとは、てめえ気に入ったぜ。この俺に一騎打ちで勝ったんだ、装置も俺の身柄も、てめえの好きにしな」

     負けたというのに何故か嬉しそうに声を上げて笑っている。
     
    「何故、帝国軍人同士で殺し合いを?ガレアン人に恨みでもあったのか?ずいぶんと身分の高い連中のようだったが」

    「帝国兵っつっても、いろいろと派閥があってな。皇族同士の閥族争いってやつだよ。皇位継承権やら、政財界のあれこれ……暗殺や陰謀うずまく帝都の裏社会で、俺は刺客として雇われただけだ」

     それに……と、アレックスは錆びた片手剣に目を落とした。
     これを見た瞬間に頭に流れ込んできた過去視。
     この帝国兵は、元々『超える力』を有していたわけではなく、奴隷階級(アン)と言われる非ガレアン族を集められて行われた人体実験で、たまたまこの能力を得たようだ。

    「僕はバルデシオン委員会のアレックスだ。この遺構の調査に来ていたんだよ」

    「そういやここ、寺院かなんかの廃墟か?あちこちに朽ちた像があるな」

    「もう立てる?こっちへ来てごらん」

     一番大きな天使像の前に二人は立って、見上げる。
     ずいぶん風化しているが、美しい少女の姿に見えた。
     ところが少し歩いて別の位置から見ると、凛々しい男の姿に見える。
     見る角度によって、顔や体つきの印象が違い、性別が変わる不思議な天使の彫像。
     第四星暦に少数民族が崇拝した両性具有の天使だという。

    「ところで……キミ、名前は?」

    「てめえに負けた時点で、さっきまでの俺は死んだ。新しい名前が必要ならば、好きに呼べよ」

     帝国兵のヴィエラは、後片付けをすると言って、先ほどの遺体の側まで戻っていった。
     ガレアン人の遺体を積み上げ、自分の兵装を脱ぐと、爆弾で木っ端みじんに破壊した。

    「こんだけ鎧も血肉もバラバラに吹き飛べば、一人くらい消えても気づかれねえだろう。なあ?」

     極秘の指令とはいえ、下級皇族の子息10人も手にかけたのだ。
     手ぶらで帝都に戻れるはずもない。
     だからこのままここで現地レジスタンスと抗争になり、全滅した事にしよう……と。
     何が楽しいのか大声でゲラゲラと笑っている。
     残虐で恐ろしい男だ。
     アレックスは呆れて言葉を失い、こんな奴は放っておいて、さっさと立ち去ろうとした。
     しかし、兵装を脱いで農奴のような質素な服に着替えたヴィエラは、アレックスの後ろをどこまでもついてきた。

    「……キミ、どうしてついてくるの?」

    「決まってるだろ?てめえは俺に決闘で勝った。いわば俺は戦利品だ。今日から俺はおまえの所有物になる。俺の命も体も、てめえの好きに扱って良いんだぜ」

     腕組みをし、ニヤリと不敵に笑ってそう答える。
     どこかの部族には、決闘で勝ったら人間を戦利品にするなんてルールがあるのか?
     少なくともガレマール帝国にはそんな文化はなかったと思うが。
     こんな変な奴をそのまま放置しておくのも危険な気がして、調査への同行を許可した。
     
    「……セラフィタ」

    「ん?」

    「呼び名がないと困るだろう。本名を名乗りたくないなら、今日から僕はキミのことを、セラフィタって呼ぶよ」

    「セラフィタ……!それが俺の新しい名前だな!なかなか良い名だ、気に入ったぜ」

     満足そうな顔で、何度もうんうんと頷いている。
     ぴんと立った大きな耳は毛並みがよく、丁寧に手入れされている。
     さらさらの長い髪は艶やかで美しいプラチナブロンド。
     北洋に降る雪のような白い肌に、アイスブルーの目をしている。
     目鼻が整った顔立ちは、まだ幼さの残るものの、老獪な雰囲気がある。
     低い声も、筋肉質な体つきも、どこからどう見ても男のはずなのだが。
     ふとした仕草や表情が乙女の様に、たおやかで可愛らしく見える時もある。
     彼にはどこか、年齢不詳・性別不明な妖しい魅力があった。
     だから、さっき見た天使の彫像の名を借りた。
     これがアレックスとセラフィタの最初の出会いで、二人の長い旅の始まりだった。

    「よろしくね、セラフィタ」


      ■END■
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