意外になくはないと気がついた雪が解けたら春が来ると応えた最初の人物は誰なのか。
肌を刺すような寒さから肌を擦り、体温を逃がさないように身を丸めていた季節から、昼間は半袖1枚でも過ごせるほど過ごしやすい気温に地元沖縄の人達も心做しか浮き足立っているように感じる。
「ふみやさん、こちらで間違いないかと。」
「へ〜……美味しそうな店構えだね」
大通りから1本細い道へ曲がった先に見えた白壁の建物の1階には、木製の扉を挟むように、左右にひし丸型の花ブロックが塀のように構えていた。左側の塀には緑白赤の縦三色旗が描かれていることから、目的地であるイタリア料理屋に間違いなさそうだ。
ゆったりとしたクラシックの音楽と、厨房からは包丁がまな板を小気味よく叩く音、温められた油が水分を含んだパスタを蒸発させる音で店内は包まれていた。
2387