空閑汐♂デイリー【Memories】12 安静を命じられたベッドの上で、嫌な考えだけが巡る。医者が言うには後数週間はこの軌道ステーションで過ごし、そこから先は地球の病院で本格的な治療をするらしい。大した娯楽もない医療センターのベッドで日がな一日天井を見つめ続ける空閑は、何度目かもわからないため息を吐き出した。
学院は勝手に退学させられて、それだけはどうしても許せなかった空閑は一方的に家族との縁を切った。地球に帰っても、帰る場所すらない。
「……あれは悪手だったなぁ」
普段の空閑であれば、話半分に聞き流して当面の寝床を確保するくらいはしていただろう。けれど、幼い頃からの夢に手が届く直前で勝手に終止符を打たれてしまった事だけは、どうしても笑って流す事はできなかったのだ。
1974