どれくらい時間が経ったのかは分からない。
分かるのはずっとコウくんに抱き締められていること。卒業式の後の教会でコウくんが想いを伝えてくれて、それに答えてからずっと抱き締めてくれている。
顔は見えないけど胸元にいる私にはコウくんの心臓の音がよく聞こえてる。私と同じぐらいずっとドキドキしていた。
「ねぇ…コウくん…」
「悪りぃ…、痛かったか?」
「ううん。平気もっとギュッ、てして」
「お、おう…」
私も背中に腕を回すと少し遠慮がちに抱き締めてくれる。
コウくんの大きくて暖かい体からは、愛用のヘアワックスとバイクの油の匂いが混ざってて…少しだけ土とサクラソウの香りがした。
「…コウくん、私そんなに柔じゃないよ…?もっと強く抱き締めてくれても大丈夫」
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