冬のとある日「あ……」
空から舞い降りる、儚い結晶。
「雪だ……」
それと同じ名を持つ愛しい少女に、青年は思いを馳せる。
「……帰ったら、電話でもするか」
そうつぶやく青年の口元には、優しい笑みが浮かんでいた。
同じ頃――
「あら、雪……月で降るのは珍しいわ」
舞い降りてくる結晶を眺める少女がひとり。
「きっと、日本でも降っているのでしょうね……」
少女はふと思う。
自分と同じ名を持つこの結晶に、愛しい青年は自分を重ねたりするのだろうか。
「……帰ったら、電話でもしてみようかしら」
◇
「――もしもし、雪?」
「――もしもし、始さん? ふふっ、ちょうど始さんにお電話しようかと思っていたところだったので、少々驚きました」
「そうだったのか?」
「ええ。昼間、雪が降っているのを見ていたら、なんだか始さんの声が聞きたくなって」
「……驚いたな。俺も同じだ」
「まあ……!」
「ふっ、奇遇だな」
「……ふふっ、嬉しいです」
「ん?」
「始さんが私のことを考えてくださっていたなんて……」
「当たり前だろう。お前は俺の大事な恋人なんだから」
「そうですね……ありがとうございます」
「……なあ、雪」
「はい、なんでしょう?」
「今度――」
こうして、優しい夜は更けていく――