チェズルクワンライ お題 傘 ぽつり、と。
頬に当たった冷たさに、誘われるようにして空を見上げた。
ぽつ、ぽつ、と。
肌になじまない水滴は、空から静かに降り出した。薄曇りに灰を足したような空の色は暗鬱として、風の流れに沿って渦巻くように流れている。
出る前に降水確率は確認したけれど、高くはなかったからまあいいやと思ってそのまま出てきてしまったことが今更ながらに悔やまれた。
久しぶりの非番の日。四隅にたっぷり埃の積もった室内と、キッチンのシンクにうずたかく積まれた皿やコップ、洗濯機から溢れた洗濯物の山を見て途方に暮れながら、ひとまず空っぽになってしまっていた冷蔵庫に入れておくものを仕入れるために街へと繰り出した僕は、両手に山ほどの荷物を抱えていた。
2029