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    きよせ

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    きよせ

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    ★晶大 ゲーセンに行く話

    #晶大
    crystallization

    ※大牙が音ゲー初心者(と言うより専門外)
    ※曖昧にぼかしておりますが、本文の筐体はbeat●aniaIIDXをイメージして頂ければと


    -------

    「な〜な〜」
    「なんすか」
    「今日ゲーセン行こうぜ」
    「いっすよ」

    レッスンの休憩中、晶と大牙は2人して大の字で寝転がりながら緩い口約束を交わしていた。
    幸い黒曜には聞かれていなかったようで、のろのろと大牙が起き上がった先でふと目があったシンは何も聞いていないと言わんばかりにゆるりと首を横に振って見せた。
    もしかしたら今日のモチベーションになれば、と思ってくれたのかもしれない。なんて、その仕草を都合の良いように捉えると、その後のいつも通りしんどいレッスンも最後まで耐え抜く事が出来た。
    体力がついてきたというのも間違いではないが、やっぱり終わった後の楽しみがあると気の持ちようが違う。そういう意味では今日は晶に感謝だな、と心の中で合掌しつつ、大牙はそそくさとレッスン室を後にし速やかに着替えと帰りの身支度を済ませていく。
    晶はと言うと、大牙が着替え終わる頃にはもう既に準備万端で、先出てるわーと言い残し裏口の方へと向かっていった。

    店の外に出てしまうと紙タバコは特に吸う場所を選ぶ為、先に一服でもしているのだろうと。大牙は特に急ぐでもなく、戸を開けると案の定壁にもたれ掛かり煙をフーッと吐き出す晶がいた。
    大牙の姿を確認すると、灰になって零れそうなタバコの先を灰皿へと押し付け火を消すなり1歩踏み出していた。

    「おー、そんじゃ行こうぜ」
    「うーす」

    心做しか、晶の足取りはいつもよりも少し足早で、それでいて軽い様に感じた。
    顔を覗き見れば、尖らせた口から上機嫌に口笛まで鳴らしている。それが少しおかしくて、釣られて大牙も肩を竦めて笑ってしまった。

    目的のゲーセンは店から歩きでも十分そこそこの店で、強いて言えばリズムゲームのコーナーが充実している店舗だ。
    1階の入口の自動ドアをくぐり、キャラクターものやプライズ仕様の大入り菓子が並ぶクレーンゲームの筐体を横目に、真っ直ぐ上の階へ向かうエスカレーターへ足をかけた。
    晶は問答無用でリズムゲームのフロアへ行くだろうし、大牙はその下のカードゲームのフロアで降りようとしたところを晶に腕を掴まれる事で阻まれ、そのまま一緒に次の階へと登る段へと連行されてしまった。

    「そっちの階って音ゲーしかねーじゃねっすか」
    「そーそー、だから今日はこっち」

    ゲーセンなんて、誰と一緒に行こうがプレイするゲームが対戦や協力か何かでない限り、ソロプレイが基本だと大牙は思っている。
    晶と今までもゲーセンに来た事は何度かあるが、このように強制連行されるのは初めてだ。
    抵抗する間もなくエスカレーターへ乗り込んだ足は、掴まれたままの腕と晶の後頭部を交互に見ている間に目的のフロアへ到着した。

    平日のいわゆる深夜の時間帯のゲーセンは特にソロプレイ勢が占めている事が多いが、今夜も例によってといった感じだった。
    1クレジットが終わる度に後ろを振り返り、待ちが居ないようであればそのまま連コインし、ガチ勢は己のハイスコアを目指して腕を極めていく。
    今やeスポーツなどの専門学校がある程度にはこの世のゲーム需要はどんどん上がってきているはずだし、たかがゲーム、されどゲーム。本気でやったら心身共にスポーツと言っても過言ではないと思う。

    そして真っ直ぐ目的のゲームの筐体へ向かっていく晶も、腕前に関しては大牙やガチ勢のこちら側と変わらないどころか、下手な人達より断然上手いのを大牙は知っている。
    もちろん自分の好きなゲームをプレイするのが1番楽しいのは間違いないが、上手い人のプレイは見ていておーって思うし、やっぱりそれなりに楽しい。

    掴まれていた腕はとっくに離されているが、抵抗する理由もない大牙は既に手際良く選曲画面を操作する晶を眺めていた。
    すると、聞き覚えのある音に気付き思わず筐体の段を上がり晶の隣に並んだ。
    大牙の反応を横目に晶は満足げだ。

    「これ、この前聞いてたやつっしょ」
    「覚えてたんすか」
    「まーね」

    先日休憩時間にぼんやりしてたら、「なに聞いてんの〜」と聴いていたイヤホンの片方を晶に取られた事があったが、その時に聞いていたEDMの曲が筐体から流れている。あの時の音は作曲者とは別の人が編曲したものだから、こっちは多分原曲だ。
    これ好きな曲だわ、と晶から聞いた時大牙は少し驚いたが、ここで繋がってようやく納得した。

    「あのミックスも良かったけどさ、こっちもまじいい曲だから教えてやろ〜って思ったんだよね」

    得意げに、そして平然と喋り続ける晶の視線はモニターへ向かっており、そのまま決定ボタンを押すと1曲目が始まり次々と楽曲に合わせてノーツが流れてくる。そのノーツを晶が的確に捌いており、判定ラインで弾けてピカピカと光っている。ノーツの量も手元も大牙の視覚的処理では追いつけず、とにかく上手い事と好きな楽曲である事しか大牙にはわからなかった。
    驚きと感心とで大牙が目を瞬かせてる間に、浮かび上がるFULLCOMBOの文字と共に曲が終了し、その後も数多の収録曲の中から2曲目3曲目と大牙の聴いていた曲を晶は選んでプレイしてみせた。

    「マイベス更新したし、今日も晶くんゼッコーチョーって感じじゃね?」
    「寧ろ俺みたいな初心者にはすげー事しかわかりやせんでしたわ」
    「それだけわかれば十分っしょ」
    「そーすか」

    大牙の気の抜けた反応を気にもせず、晶は次のクレジットを入れていた。
    自分の前まで晶の腕が伸びてきたと思ったら、左右で設定画面が現れていて交互にボタンを押して先程の選曲画面まで進めている。
    そういえばダブルプレイなんてモードもあったな、なんて一歩下がろうとした大牙を晶はトントン、と手元のパネルを指差して制した。

    「いやいや、こっちはお前がやんの」
    「は?え、ちょっ」

    デモで流れているのは先程の1曲目で、画面の左上でカウントされている数字は既に3.2.1と時間切れ目前だった。
    そのままプレイ画面へと進み、晶が1人でプレイしていた時にグラフが表示されていた箇所には構える間もなく大牙に用意されたノーツが落ちてくるものだから、取り敢えず慌てて画面と手元を見比べながらボタンを押してみた。タイミングが合わず、等速のノーツは判定ラインをBADの表示と共にすり抜けていき、思わず大牙の口からはチッと舌打ちが漏れた。
    隣の晶は大牙の何倍もあるノーツを軽やかに捌いているから尚更だ。

    「いやまじおっそ、なんすかこれ」
    「あー、悪ぃ。ハイスピそのままだったわ。でもまーいけるっしょ」
    「いやいや無理ゲーっしょ」

    好きな曲であるとはいえ、さすがにのんびり聴いてる場合ではない。
    大牙が狼狽えている様を察したのか、晶はケラケラと笑っている。それが悔しくて、なんとかクリアだけはしようと大牙は画面に齧り付いた。
    FPSや格ゲーを始めた頃、容赦なくボコボコにされていた時の記憶が過ぎり、晶にもこんな初心者の頃があったんだろうか…、となんとなく思った時には最後のノーツを叩き終えていた。

    「ほら、クリア出来てんじゃん」
    「ギリギリっすよ。このゲージ見りゃわかるでしょーが」
    「でもクリアはクリアだろ?次はハイスピ調整してやるからさ」
    「ついでにあのシャッターみたいなのも付けたいんすけど。視野が広すぎて」
    「あーサドプラ?おっけー」

    無茶ぶりには違いないが、意外にも手厚い晶の様子だと大牙なら単純にこのくらい出来るだろうと思って促したのかもしれない。
    てっきり下手くそだと笑われでもするんじゃないかと大牙は眉を顰めていたが、設定画面でこんなもん?こっちは?と逐一聞いてくれる晶を怒るに怒れず、それどころかじゃあもう少しやってみるかという気持ちにさえなっていた。

    「次もさっきの曲でいい?」
    「いっすよ」

    2曲目は設定を変えたおかげで格段に見やすくなったからか、半透明で鈍い反応ばかりだった判定ラインのノーツがいい具合にピカッと光るようになった。
    元々パソコンのブラインドタッチも得意な上その類のゲームもやってきている為、慣れるのも早いのかもしれない。そして上手くいくとそれだけで楽しくなってしまうもので、ぶつくさと文句を垂れていた大牙の口から打って変わってお、あっ、と反射的に盛れる声を楽曲の隙間から微かに聞き取った晶の口元は、また楽しげにつり上がっていた。

    曲を聴かせたかった、と言うのは表向きの口実で、その実はせっかくなら自分の好きを共有したかった、と言うのが晶の本音だった。
    素直に伝えてやるつもりはさらさらないが、2曲目のリザルトを見て満更でもない顔をしている大牙を見れば、作戦は概ね成功と言っても過言ではないはずだ。
    その上調子に乗ってきたのか「なんか慣れてきたっすわ」なんて大牙が言うものだから、3曲目は全く別の曲を選んでやった。
    案の定初見の曲でリズムは取りずらそうにしていたが、クリアゲージのまま完走出来た事で大牙はやり切った顔をしている。チョロすぎだろ、と晶は思わず鼻で笑ってしまった。

    「今の曲も割と好きっすね」
    「えっ、まじ?オレも好きなんだよね〜」

    好みが似てるんだな、と、どちらともなく口にしようとしたところで、寸前で言葉を飲み込む。
    互いの顔を合わせれば言わずもがな察する事が出来てしまい、それがおかしくて同時に吹き出してしまった。

    「人いねーし、もう少しやってこーぜ」
    「俺腹減りやしたわー」
    「じゃーその後ラーメン」
    「おごりっすか?いえーい」
    「バーカ、自腹に決まってんだろ」

    ケチーとむくれる大牙を他所に、問答無用で晶は次のクレジットを入れた。
    そのままもう1回を2人して繰り返していくうちに、結局閉店間際まで居座る羽目になるのであった。




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    サドプラ…“SUDDEN+”画面のレーンを隠す機能。この場合は上からシャッターみたいに下ろして自由に調整出来ます。
    ピカピカ…PERFECT判定だとピカピカに光るのでその様の表現。
    EDM…“エレクトロニック・ダンス・ミュージック”
    電子音学の中でのダンスミュージックの総称。ピコピコとかギュイーンとかしてるやつは大体EDMだと思ってもらって良きです◎
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