「雲居の空」第2章 常世の国の皇子・アシュヴィン2.常世の国の皇子・アシュヴィン
「オレが常世の国の皇子・アシュヴィンだ」
風早に案内され千尋が向かった先は常世の国であった。
千尋の目の前に現れたのは赤毛の髪に、肌に密着した服とはいえ着ていても一目で筋肉質だとわかる体躯を持つ皇子アシュヴィンだった。
隣にいる風早とは色合いも雰囲気も真逆なため、千尋は戸惑いを隠しきれない。
しかし、そんな千尋の様子を気にする様子もなく、アシュヴィンは口を開く。
「常世の国と豊葦原の和平。悪くないな」
そう言いながらアシュヴィンは千尋の頭のてっぺんから爪先まで観察するかのように視線を動かし、そして千尋の後ろにいる風早も一瞥する。
「ふーん、なるほどな……」
千尋と風早の間を流れている空気感、それに気づいたのだろうか。しかし、アシュヴィンは不快さではなく面白がる様子を見せた。
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