憎まれっ子世に憚る(安赤)1:降谷
憎まれっ子世に憚る、ということわざをご存知だろうか。 人の目を気にせずわが道を突き進むような人間が、のびのびと世間を渡っていくことを指す。
まさに赤井のことだと思った。日本の許可を得ずに捜査を繰り返し、発砲し、潜伏し、やりたい放題のFBI捜査官。スコッチを見殺しにした男。降谷零の憎しみを一身に受けてなお、飄々と立っている黒髪長身の元スパイ。
身体能力に自信のあった降谷と渡り合えるくらいに強く、銃の腕は劣っているとさえ感じるハイスペック野郎。奴が優秀であればあるほど、降谷の憎悪を焦がした。そんなになんでもできるなら、なぜ、どうして、スコッチを!
その憎しみが氷解したのは組織が潰れて数か月後、後処理もようやくひと段落ついた時分のことだ。降谷のその謎の解明に関わるヒントを残してくれたのは、降谷自身でも赤井でも小さな名探偵ですらなく、小さな科学者であった。
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