綺麗になった 俺が最初に彼女を知ったのは幼稚園の芋掘り日だった。あの時の泥で汚れた全開の笑顔を見て決めたことを彼女に打ち明けると、彼女はすごく驚いていた。
「だって、ほんとに小さい頃のことだし、泥で汚れた顔なんてきれいじゃなかったと思うし……」
「そうだな。でも、俺には綺麗に見えたんだ」
理屈では説明できない。それがきっと運命ってやつなんだろう。
それから十年以上の時を経て、キャンプ場で彼女に焼き芋をあげた時、幼稚園の芋掘りの時と同じ笑顔だった。違っていたのは泥がついていないことくらいで。
(本当に綺麗になったな……)
その時の彼女の笑顔を見て、改めてそう思った。あの時だけじゃない。体育祭で颯砂に負けた俺に寄り添ってくれた時も、縁日でかざぐるまを真剣に見ていた時もそう思った。そして、卒業式に教会で二人だけの式を挙げた時、ウェディングドレス姿でもない制服姿で、指輪も無くて俺が渡した髪飾りを身に着けて、最高に幸せそうな笑顔を見せる彼女が一番綺麗だって思った。
1509