男子校なのに俺以外が女体化してハーレム状態な件男子校なのに俺以外が女子になってハーレム状態な件
「ねえ、」
形の良い唇が弧を描く。蠱惑的な笑みを浮かべる口から、飴のように甘い声が零れた。
「ま〜くんは知ってみたいと思わない?」
柔らかな吐息が首筋をなぞっていく。しっとりと温かい息の生々しさに思わず生唾を飲み込んだ。
(どうしてこんなことになってしまったんだ)
たおやかな手足。薄く笑う唇。艷めく黒髪。視界の暴力とも言えるような幼馴染の姿から俺は目を逸らした。
01
海辺の小高い丘に聳え立つ夢ノ咲学院は男子アイドルの育成に特化したアイドル科が存在する。芸能界との繋がりが強く、夢ノ咲出身というだけである程度のキャリアが得られるため、全国津々浦々からアイドルを志す少年たちが集う場所だ。生徒は個性派勢揃い。皆アイドルを目指すだけあってキラリと光るものを持っているが、光が強過ぎるあまりトラブルや珍事件が絶えない。何かと忙しない学校である。
至って普通の高校生---アイドルを目指してる時点で一般という意味での普通からはかけ離れているが、混沌とした学園の中で比較的普通な俺、衣更真緒は個性豊かな仲間たちに振り回されながらも平和な日々を送っていた。変人奇人に囲まれているため、ちょっとやそっとの事件では動じないと自負していたが、流石に今回ばかりは受け止め難い事実に頭を抱えた。
「何が、どうなってるんだ・・・・・」
いつもの朝。幼馴染である朔間凛月の部屋。いつものように凛月を起こすべく、駄々をこねる声を無視して布団を引っペがした。
触り心地の良い布団から現れたのは見慣れた男ーーーではなく、朔間凛月の面影を残した美少女だった。
「んう・・・さむいよまーくん・・・」
瞼が僅かに開き、見覚えのある真紅が覗いた。声が高くなっているものの、仕草といい話し方といい全てがあまりにも凛月そのものだった。
(凛月が女の子だったらこんな感じなんだろうな)
緩慢な動きで布団を取り戻そうとする少女を視界に捉えつつ、現状について考えた。
これはきっと悪い夢だ。朝起きて、幼馴染の部屋に行ったら幼馴染にそっくりな美少女が寝ていただなんて漫画の世界じゃあるまいし、夢でしかないだろう。朔間家に実は娘がいたなんて話は聞いたことがないし、もしいたとしてもこの幼馴染が兄弟とはいえ他人にベッドを貸すとは思えない。したがって導き出された最適解はこれが夢だということ。早く夢から醒めなければ。もしかしたら寝坊しているかもしれない。躊躇はしてならない。俺は右の頬を思い切りつねった。
「あ、あれ?」
特に何も変わらない。痛みが足りなかったのだろうか。もっと強くつねってみた。それでも現状は変わらない。つねるだけじゃ甘いのか。もっと痛くしなければと思い、近くに壁に頭をぶつける。痛い。普通に痛い。どれだけしぶとい夢なんだ。
「何やってんのさ。朝っぱらからゴンゴン五月蝿いよ・・・」
悪質な夢は一向に醒める気配がない。じんじんとした痛みが「これは現実」と語りかけてくる。認めたくない。早く目が醒めてくれ現実の俺!!!
「あれ、なんか胸が重い・・・わお、おっぱいだ・・・おお、すごい・・・やわらかい。ねえ、まーくんも触ってみなよ〜」
「触んねえよ!!!!」
あまりにも暢気な声に思わず叫んでしまった。
「柔らかいよ?」
そう言って、少女は自分の胸を見せつけるようにして揉みしだく。容易く形を変えるその塊は小さな手から零れそうで、見ているだけでその柔らかさが伝わってきた。手で目元を隠してはいるが、男の性なのかやはり少女の胸元が気になってしまう。指の隙間からさり気なく様子を伺っていると、鮮やかな赤色と目が合った。
「ほら、ほんとは気になるんでしょ」
見透かすようなその瞳に