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    Kisakibear

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    先輩呼びされるのなんかやだなな百々人。

    #SideM
    #アイドルマスターSideM
    theIdolm@sterSidem
    #花園百々人
    gardenHyakunin

    「先輩」 「先輩」、そう呼ばれるのは何も初めてじゃない。自分で言うのもなんだけど年上年下関係なく程々に好かれるのは得意だし、学内で嬉しそうにそう自分のことを呼び慕ってくる一年生だっている。
     だけど、どうしてか、同じユニットのあの後輩が呼ぶ「百々人先輩」の響きに。今まで感じたことのないくすぐったさとむず痒さを感じずにはいられないのだった。

     よりにもよってダンスレッスン中にそんなことを考えていたものだから、当然天峰に集中力の甘さを指摘されることになってしまった。

    「百々人先輩、どうかしました?」
    「……ううん?何でもないよー」

     ちょっとぼんやりしてただけ、というと天峰は納得したように頷き、あとはもう気にした様子もない。それはそれでどこか釈然としないが、今考えていることを追求されても困る。

     端的に言うと、百々人はどうやら天峰に「百々人先輩」と呼ばれるのが苦手らしかった。
     他の年下に、例えば学校の後輩とか、事務所の自分より年下の子達に言われるのなら大して気にならない。しかし天峰からの「百々人先輩」という呼び方に、百々人は内心いつも引っ掛かりを覚えている。
     年こそ自分の方が一つ上だがアイドルとしては横並び、同じ一年生だ。別に畏まらなくてもいい、そうひとこと言えばやめてくれるのかもしれないが、それを言うのは憚られた。そもそも天峰は口調が敬語であること以外、特に百々人にも眉見にも遠慮はしていない。先輩呼びも敬語を使うのも、天峰の意思であり二人が強制したわけではないのだ。
     最年少の可愛げというやつを活かして時に大胆に踏み込んでくることもあれば、こちらがあまり聞かれたくないことはスマートに避ける。そういう天峰の巧みさもあって、知り合った日の浅さの割にはC.FASTは協調性のあるユニットになってきていると思う。だからこそ、百々人は自分の中の引っ掛かりをまざまざと意識せずにはいられないのだ。

    休憩時間中に「スポドリを切らした」と天峰が言い、下の階の自販機に買いにレッスン室を出て行ったタイミングで、百々人は眉見に話しかけた。

    「マユミくんは、アマミネくんに先輩って呼ばれるの、どう思う?」
    「どう、とはどういう意味だ?」
    「変な感じ、しない?」
    「他校とはいえ秀も後輩だからな。別段おかしくはないだろう」
    断言する眉見に、マユミくんはそうだよねえと百々人は呟く。自分以上に多くの人から慕われる眉見からすれば、天峰にそう呼ばれることに大した重みを感じたりしないのかもしれない。

    「その言い方、百々人は嫌なのか?」

     そう真っ直ぐに聞かれると、困る。
     自分より要領が良く、優れていて、自信家の天峰。とはいえ彼も完璧なわけではなく、何か抱えているようなのは日が浅いながらも察してはいる。だけど傷ついても諦めずに真っ直ぐと立っている姿は、百々人からしたら少し眩しい。目を背けたくなる程度には。
     天峰が単に年上だからという理由で先輩と呼んでいるのはわかっていても、自分が勝手にそこに重さを見出してしまう。

    「嫌なわけじゃないよー。ただ僕ら同じユニットのメンバーだし、アイドルとしてはみんな新人でしょ?」

     結局そう当たり障りなく誤魔化せば、一応眉見は不審に思わなかったらしい。

    「このユニットが5年、10年と続いていけば、呼び方や態度も変わっていくかもしれないな。今はともかく、二十代にとっての一つ二つの年齢差はあまり気になるものではないだろう。」
    「5年後、10年後……」
    「まあ、今は目の前のことで精一杯だが」

     階段をパタパタと駆け上がる音が聞こえる。休憩中に体力を消費したらあまり意味がない気がするのだけれど。
    ドアを開けたのは案の定天峰で、珍しく少し興奮した様子でこう言った。

    「鋭心先輩、百々人先輩。今聞いたんだけど下にカフェパレードから差し入れのおやつあるって。早い者勝ちらしいからそれ食べてからレッスン再開しましょうよ」

     カフェパレードのお菓子はとても美味しく毎回激しい争奪戦らしい、そんな噂のお菓子を前にして、天峰は少しそわそわした様子だった。

    「……まあ、食べた分のカロリーはそのままダンスレッスンで消費すればいいか」
    「食べてすぐはあんまり動きたくないなあ。お菓子ってどういうのだろ?」
    先輩達早く早く、と急かす天峰に苦笑しつつ、眉見と揃ってレッスンルームを出た。

     確かに百々人は彼に「先輩」と呼ばれることが苦手だ。苦手なのだが。
     彼にそう呼ばれなくなったら惜しい、という気持ちが、どうしてだか胸の奥に確かにあった。
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