壮年鯉月② 「そうだ、土産。」
そういって鯉登が差し出したのは緑を基調に、よく晴れた日の鯉登の髪を思わせる紫が差し込まれている、
「組紐ですか?」
正解だと言わんばかりの破顔。普段は精悍な面持ちなのに表情筋を緩めれば少年のように若々しい印象になる。独り占めしたくなる様な、好きな部分の一つだった。
それにしても組紐なんて久し振りに見た。帯締くらいでしかお目にかかる機会はなかった上、自分には一度や二度と見掛けたくらいだったからよく覚えていたな、と不思議にも思える。
「これはな、人と人を繋ぐ意味もあるそうなんだ。」
「はあ。」
「何だその顔は。安心しろ、私のも作ってある。」
そう云っていそいそと取り出したのは先ほどと同色の緑に金を差し色に入れた一品だった。お揃いだと見せびらかす様がいつか、面子を交換したあの日の鯉登と重なる。
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