Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    龍田くらら

    Twitterに投げてた絵の保管庫

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 228

    龍田くらら

    ☆quiet follow

    学パロ臥英を小説にしたらこんなんかなと思ってぺちぺち書いてみた。
    冒頭少しだけ。

    ##学パロ臥英

    学パロ臥英①空高く、宙に浮かんだしなやかな体に、臥信は初めて「美しい」という感想を抱いた。
     強かに咲き誇る花も、どこまでも澄み渡る空も、静かにたたずむ月も、今まで見たどんなものよりもそれには及ばない。
     そんなに高く跳んだら、神の怒りをかって撃ち落されるのじゃないだろうか。柄にもなくそんなことを思った次の瞬間、彼の体は吸い込まれるように地面に向かい、そして緑色のマットに沈んだ。 
     受け身を取った体は勢いに任せて綺麗に一回転し、無駄のない筋肉をまとわせた脚を地面に着地させる。乱れた黒髪を白く細い指がかき上げた、瞬間。
     彼と目が合った。
     交わった視線はすぐに外され、彼は臥信に背を向けて走り出した。
     高1の春。仮入部期間を終えて部活動が本格始動した頃。まだ夏には早いが桜などとっくに散り終えたグラウンドで、臥信は呆然と立ち尽くしていた。
     たった数秒の出来事が、スローモーションで頭の中をリフレインする。
     たった一瞬合わさった視線を思い出して、体の奥がカッと熱くなるのを感じた。
     目線は今も、走り去った彼を追っている。
     初めて見た、棒高跳びの競技に目を奪われたわけではないことはわかっていた。他の誰でもない、彼が跳ぶ姿が見たい。
     彼が描いた弧に重なるように、次の生徒が宙に舞ってバーを越える。
     違う。
     網膜に映る景色を、脳内が彼に書き換える。
     次、いつ彼が跳ぶだろう。次、いつ彼が跳ぶ姿が見られるだろう。
     得体のしれない欲と衝動に視線をさまよわせたとき、立ち止まってぼんやりしている新入部員をどやす先輩の声が聞こえた。

     ◇◇◇

     校舎の裏、大体育館の横に位置する北グラウンドには陸上競技に適した芝生の区画があり、その周りをトラックが囲っている。
     バスケ部に入った臥信は練習場所である大体育館から外へ出て外周に向かう時、必ず芝生エリアの練習風景を横目に盗み見ていた。
     陸上部の練習区画の奥のほう。高い位置にあるバーとその下にあるマットの向こうに、彼がいた。陸上部で揃いで作ったのであろう練習着をまとってストレッチをしている。
     あぁ、今日はまだ跳ばないのか。
     そんなことを思いながら、先輩たちに続いてグラウンドを抜けて敷地外に出る。
     臥信の通う高校にはホームルーム棟と教科棟の2棟の校舎、それと大体育館に小体育館、図書館棟、グラウンドは3つと公立高校の中ではかなり広い敷地面積を有していた。そのため、外周で回る「校舎周り」はそれなりの距離があった。
     中学の時からバスケ部で、それなりに運動してきていた臥信でも、それを何周もするのは少し気が滅入る。
     外周前の、一瞬の癒し。
     陸上部の彼を盗み見るのが、日課になっていた。
     どこのクラスの生徒なのか、そもそも何年生なのかもわからない。外周に出るたび見かけるだけで、名前すら知らない。人が集まる場所にいれば見つかるかと、学食に通っても一切見かけないし、同じクラスの陸上部の友達に聞いても「種目が違うからわからん」と言われてしまって、どこの誰なのかさっぱりわからない。声をかけてみたくても、外周に出るときにしか見かけないから話しかけることもできない。そのうえ先日棒立ちしてしまったせいでしっかり先輩が目を光らせてしまっている。
     陸上部で、棒高跳びの種目。とてもきれいに跳ぶ、黒髪の彼。
     たったそれだけの情報しか持たない臥信が、彼を遠くから眺め続けて、一年。
     すっかり謎に包まれた彼が、目の前にいた。
    「あ!!!」
    「…あ?」
     いぶかしげに顰められた眉と三白眼ぎみの瞳が「誰だお前」と言っているようだった。当然だ。臥信が一方的に見ていただけだから、彼は臥信のことを知らない。
    「いや、あの、陸上部の人ですよね。棒高跳びの!」
    「…はぁ」
    「いつも見てて!」
    「は?」
    「あ、いや、いつも綺麗に飛ぶなぁと思ってて…」
     へら、と笑う臥信に、彼はさらに眉間のしわを深くする。初対面の人間に対しこうまであからさまに不快感を表に出せるものだろうか。いっそすがすがしいほどに眉を顰めた顔がまじまじと臥信を見つめる。まるで敵の動向を探る野生動物のように。
     学年が上がり、おのずとクラス替えが発生する。始業式の日に昨年度末に発表されたクラスへ行き、自分の席を探して座ろうとしたところで彼を見つけた。彼は臥信の前の席の椅子に手をかけたところ。
    「えっと、席ここ?」
    「……」
    「俺、後ろだからさ、よろしくね」
     鋭い視線を投げかけてくる彼は、臥信の差し出した手を一瞥した後「ふん」と鼻を鳴らして席に座った。
     やり場のない手を震わせながら(こいつ猫か)と思った。もしかしたら猫パンチを食らわなかっただけましなのかもしれない。
     臥信は渋々、自分に割り当てられた椅子に腰かけ頬杖を突く。辺りを見渡すとちらほらと見知った顔が教室内に点在していた。臥信の学年は全部で9クラス。1年生のときは文理混在だったが、2年生からは1組から4組が文系クラス、5組から8組が理系クラス、9組が外国語科クラスに分かれる。臥信は6組、理系クラス。去年同じクラスだったり、体育が合同で話したことがある生徒もいるが、わざわざそちらに話しかけに行く気は起きなかった。臥信は友達は多いほうだ。あまり人見知りしないし、男女問わずだいたいの人間と話を合わせて会話を広げることもできる。いわゆる「コミュ強」と言われる部類に属している自覚はある。こんな警戒心丸出しの野生動物みたいな少年を相手にしなくたって、友達はいくらでも作れる。しかし、臥信の頭の中はこのクロヒョウをどう手懐けるかでいっぱいだった。
     
     ◇◇◇
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏🙏👏👏👍☺☺☺👏👏👏👍👏👏👏👏👍👏👏👏👏😭😭😭👏👏👏💘💘💘☺☺☺👍💖☺💖👍☺💗☺☺☺👏👏💞🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works