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    Rahen_0323

    @Rahen_0323

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    Rahen_0323

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    カキツバタが居なくなる話五話目です。完全シリアス。ずっとハルトくんがブチギレてます。
    シリーズ物なので「アレは死んだ(一話)」「SOS?(二話)」「堪えた悲鳴(三話)」「円盤(四話)」から読むことをオススメします。
    次回少しは進展すると思います。総文字数2万字をとうに超えているのでそろそろ進展させたい。

    王者僕とスグリとアカマツくんは、タロちゃんに伝えられた住所、ソウリュウシティにあるあの先輩の実家を訪ねた。
    それは随分立派なお屋敷で、それなりに驚いたけれど。まあツバっさんが実はお坊ちゃんだったという事実は些細な話だった。
    「じゃあ、行くよ」
    「うん」
    無駄話の一つもせず、僕が先陣を切って手を伸ばし、インターホンを鳴らす。
    ……返ってきたのはシンとした静寂。中々応答が無かったので懲りずにもう一度押して、ついでに中まで届くよう声を張った。
    「ごめんくださーい!ブルーベリー学園リーグ部チャンピオンのハルトです!カキツバタくんについてお話を伺いに来ました!」
    「……………………………」
    「すみませーん!誰か居ませんかー!?」
    留守……いや、多分無視してるんだな。
    試しに門の格子を掴むも、当然のように閉まってる。僕のコライドンやスグリのカイリューを使えば乗り越えるのは簡単だけど、流石に不法侵入はアウトだろう。
    「クソッ!なんも話す気は無えってか!」
    「スグリ、落ち着いて」
    スグリが苛立たし気に壁を殴るので、一瞥しながら宥めた。気持ちはよく分かったから、あまり強くは注意しなかったが。
    「どうする、ハルト……?」
    「…………タロちゃんが言うには、お祖父さんのジムリーダーシャガさんとも連絡が取れないみたい。こうなったらダメ元で確かめに行こう」
    「それは、つまり」
    「ソウリュウジムに行くのか」
    僕は首肯する。イッシュのジムバッジは持ってないけれど、しかしこちらにはパルデア及びブルベリーグチャンピオンの肩書きがある。マトモなリーグなら多少は譲歩して入れてくれるだろう。
    それに僕達はツバっさんと同じ学園生でもある。居留守はともかく真正面から突っ撥ねられる理由は無い。

    本当に、ツバっさんが死んだのであれば。なにも疾しいことが無いのであれば。そうだろ?

    「行こう」
    向こうの動きはどれも真実に繋がる筈。僕はツバっさんのように狡賢くはないが、自分なりに考えて歩き出した。
    背後から友人達がついてくる。
    「ずっと思ってたけど……ハルト、見たこと無いくらい強火だね」
    「しょうがねえよ。カキツバタとハルトは、なんだか分かんねえけど仲が良かった。それにこういう性格だから……一番悔しいのは、カキツバタを放っておけないのはハルトだべ」
    スマホロトムにインストールしていたマップを広げて進み続けて、間も無くソウリュウジムに到着する。……まさかあの怠惰でちゃらんぽらんな先輩の祖父がジムリーダーだったなんて、ついさっきまで知らなかったけど。
    ともあれ、眼前に聳えるのは仮にもポケモンジムだ。おまけにここは、本来ジムチャレンジの終盤に訪れる関門。普通ならば足が竦むものだろうけど。
    「あっハルト!」
    「躊躇いねえな、流石に」
    エリアゼロに比べれば大したことは無い。僕は一瞬も立ち止まらずに突入した。
    「あっ!ちょっとキミ達!」
    「なんですか」
    入ると直ぐに大人に立ち塞がれるが、スグリとアカマツくんとは正反対に僕は微塵も怯まなかった。
    というかむしろ苛立ちが最高潮で睨んでしまう。邪魔をしてきた二人の男性は、まるで異常者を見るように顔を引き攣らせる。それでも再び制止を掛けた。
    「外の張り紙見なかったのかい?今ソウリュウジムは閉鎖中なんだ。鍵を閉め忘れていた私達も悪いが、勝手に入られたら困るんだよ」
    「閉鎖中?」
    「なんでですか」
    「ジムリーダーのシャガ様の体調がよろしくないのだ。彼の方はご高齢な上、この町の市長も務めていらっしゃるので無理が出来ない。現在代わりのリーダーを探しているところだが、リーグから派遣されるまでここはお休み、」
    「シャガさんはどちらに?」
    「へ?」
    「え?」
    「シャガさんは。何処に居るんですか?」
    ジムが閉鎖?体調が良くない?
    だからなんだと言うのか。こっちは訳も分からないまま大事な親友が死んだと伝えられたのだ。しかもそのクセ生きてる可能性が高まった。もしも本当に亡くなったのだとしても、納得の行く全ての説明を受けるまで帰れない。帰れる筈が無い。
    「僕達はカキツバタくんの友達です」
    「「!!」」
    「彼は死んだと聞きました。でも納得出来ない点が多いんです。……シャガさんは何処ですか?彼に話が聞きたい」
    「いや、それは、」
    「…………カキツバタ様は確かにお亡くなりになった。納得もなにも、」
    「じゃあなんで学園の先生にも連絡が来ていなかったんですか?普通報せますよね?」
    「ドラゴン使いの一族の仕来りはそう単純ではないんだ。時が来ればいずれお伝えするつもりで」
    「彼はどんな事故で死んだんですか?」
    「わたくし共の口からは答えられない」
    「ならシャガさんに会わせてください。彼から聞きます」
    「だから!!彼の方は体調がよろしくないのだ!!なんなんだねキミは!!」
    普段はお行儀良く振る舞っているが、流石にこんな連中にまで親切丁寧にするほど僕は大人ではない。
    舌打ちを零し、再び睨み上げた。
    「パルデア地方チャンピオンランク。及びブルーベリー学園ブルベリーグチャンピオンのハルトです」
    「…………!?ちゃ、チャンピオン……!?」
    「貴方達、見た感じカキツバタくんより弱いですよね?なにやらボールの準備をしているようですが、あの人を下した僕に勝てると思うんですか?」
    二人組が手を腰に持っていきモンスターボールを握っているのは見えていた。僕は指摘しながらコライドンのボールを取る。
    「やるってんならかかってきなよ。完膚なきまでにボコボコにされる覚悟があれば、ですが」
    「…………!!このっガキ!!黙っていれば!!」
    「おいハルト!!」
    「スグリとアカマツくんは下がってて。こんな三下、僕の相手じゃないから」
    「ハルトそんな口悪くなかったよね!?何処で憶えたのそんな台詞!!」
    友人達を下がらせて、コライドン二匹のボールを投げた。
    登場したドラゴン達に敵の二人は目を剥く。彼らも一応ツバっさんと同じく一族の人間なのだろう。なら、コライドンの異質さには気付くのは分かってた。
    「さあ、土の味噛み締めろ。僕達からあの人を奪っておいて、タダで済むと思うなよ?」
    「っ、サザンドラ!!」
    「ボーマンダ!!そ、ソイツらを追い出せ!!」

    ここで否定もせずに向かって来た以上、一族がクロなのは確定したようなものだ。

    許せない。許せない。僕の友達を、友達の笑顔を奪うヤツは、大人だろうが偉かろうが、許さない!!

    「サザンドラ、"りゅうの、」

    「コライドン!!!"げきりん"!!!」

    「「!!」」
    僕は怒りを込めて叫んだ。応えるように相棒と嘗ての宿敵は飛び込み、一撃でヤツらのドラゴンをひんしにさせる。
    「なっ」
    「は……!?」
    「もう終わり?まだ手持ちが居るなら早く出して。僕はお前らなんかに興味無いんだよ」
    ポケモンには申し訳ないが、こっちも余裕なんて残っていない。楽しくもないバトルはさっさと終わらせるに限る。
    「それとも降参?」
    前髪を掻き上げながら威圧すれば、相手は息を呑んで震えて尻餅をついた。
    「な、な、なんだよお前!!なんなんだ!!」
    「い、一体なにが目的だ!!こんな狼藉、ここがイッシュチャンピオンアイリス様の巣だと分かった上での所業か!?」
    「イッシュチャンピオン?いつもなら戦いたいけど、今はそんな人どうだっていい。目的だって散々言ったよな?僕が探してるのはカキツバタただ一人だ。彼に会う為にシャガさん出せって言ってんの分かんない?」
    人の話は聞けよ、と、残りの四匹のボールを投げた。
    どれも当てつけでドラゴンタイプにしていて、その上最後に飛び出たのはツバっさんのジュカイン。ヤツらはいよいよ真っ青になって悲鳴を上げた。
    「な、か、カキツバタ様の……!!」
    「何故お前が!?」
    続けて、アカマツくんの元からオノノクスが、スグリのポーチからキングドラが現れる。
    三匹共、怒りと悲しみの混じった顔をしていた。
    「あの人の死を突き付けたかったのかどうか知らないけど。タロちゃんにこの子達を渡したのは悪手だったね?」
    きっと最大の誤算だったのだ。この子達が主人から手紙を預かっていたことも、僕達の仲間として動くことも、彼らにとっては予想だにしない出来事だったと考えられる。
    愚かで、浅はかで、醜いことだ。怒りを通り越して笑えてきた。
    「シャガさんは何処ですか。彼がダメならいっそカキツバタくんを出して。今直ぐ彼を返してくれるなら、全部水に流してもいいよ」
    きっと僕は、今にもこの場所全てを壊してしまいそうな顔をしてるのだろう。敵はすっかり怯えて口をパクパクさせていた。
    ビビって泣けば許されるとでも思ってるのか。どうしてこうも頑ななんだ?そんなにもあの人を逃したくないって?

    そういえば、タロちゃんは『カキツバタの他にも"なにか"に巻き込まれた人が居るのかも』と言っていた。


    『探しに来ないでくれよ』

    『さようなら。お前らの未来が幸せであることを願ってる』


    「まさか、あの人をお前らの言う『仕来り』に巻き込んだんじゃないだろうな」

    「っ、」
    ふと過ぎった可能性をぶつけると、ヤツらは反応した。
    ヤツらとツバっさんは古くから続く由緒正しき一族だ。"なにか"の正体は、一族絡みの決まり事……因習かなにかなのだろうか?

    …………大事なことなのか、知らないけど。そんなことの為に……!!

    「コライドン、ジュカイン」
    「!! ひっ、」
    「うわあっ!!!」
    ドラゴン達は連中を押し倒して、顔の横に拳を叩き付けた。地面がヒビ割れ建物が揺れる。
    「カキツバタは何処だ。無事だよな?」
    スグリとアカマツくんがオロオロと止めようとするも、構わず僕も詰め寄った。
    「もしも酷い目に遭わせていたら、怪我の一つでもさせてたら、僕はお前らを一人残らず叩き潰す」

    答えろ。教えろ。命が惜しいのなら。

    「そこでなにをしてるの!?」

    「わぎゃ!?」「うわっ!?」
    そのタイミングで、女性のものらしき大声が劈く。
    僕は振り向き、ずっと入り口付近に居たのに気付かなかったらしい友人達が仰天した。

    「あ、アイリス様!!!」

    待ったを掛けてきたのは、僕でさえ知っているイッシュ地方の女王。チャンピオンアイリスだった。

    「キミ達は誰?私の仲間になにをしてるの?今直ぐ離れて!」
    「……………………」
    ここは彼女の巣だ、とコイツらは言っていた。リーダーは当然シャガさんだろうが、アイリスさんも強い繋がりがあるのだろう。
    正直、年上とはいえ女の子に高圧的に振る舞うのは気が進まないが。ぶっちゃけて言うと、あの親友のことを知ってるなら誰でもよかった。
    僕はポケモン達に放してやるよう指示して、アイリスさんへ向き直る。
    「初めまして。僕はパルデア地方から来ました、チャンピオンランクのハルトと言います」
    「……!!チャンピオン?貴方も?……そんな子が一体どうして、なんの為に彼らを?」
    「単純です、親友を見つける為ですよ。……彼の名前はカキツバタ。知ってますよね?」
    「!!」
    途端に彼女の顔色が変わる。やっぱり知り合いだったか。
    アイリスさんについて細かい部分までは知らないが、彼女は竜の里という場所からやって来たとネットで見た。多分一族の血は流れてないと思うけど、でも関係性は強い。
    「カキツバタくんについて伺いたいんです。その為にシャガさんに会いたかったんですが……」
    「…………お祖父ちゃんは、あの子が居なくなってから臥せってるの。とても会って話せる状態じゃない。あの子の話なんて特に」
    「じゃあ貴女に訊きます。……僕達の友人は、何処ですか。なにがあって消えてしまったんです?」
    「お、オレも知りたいよ!カキツバタ先輩はオレの先輩なんだ!強くて、優しくて、それで……」
    「俺も……友達って言っていいのかは、分かんねっけど。アイツになにかあったのなら放っておけない。教えてよ。なにがあったんだ?本当に死んだなら、ちゃんと詳しく話して納得させてよ」
    「………………………………」
    この人も沈黙を貫くのだろうか。
    失望を覚えそうになったその時、彼女はゆっくり瞬きをして頷いた。
    「先ず仲間のポケモンの手当てをさせて。その後場所を変えて話しましょう」
    「「「!!」」」
    「私も、全てを知ってるわけじゃないんだけど。話せることは全部話すよ」
    「アイリス様!!」
    「止めないで。この子達はカキツバタを探しに来てくれたんだよ?やり方はともかく、貴方達もあんまりだよ。もっと真摯に向き合ってあげようよ」
    「「……………………」」
    「いいよね、三人共?」
    「はい」
    「勿論です!ありがとう!」
    「早く終わらせてくださいね。僕それなりに短気なので」
    どうやら対話まで漕ぎ着けられたみたいだ。正直イッシュの王者と真っ向から戦って勝てるかは分からなかったので、ホッとする。
    アイリスさんは僕が叩きのめした二匹のポケモンを癒して、それから僕達をジムの奥まで案内した。
    「どうぞ、座って。おもてなしは出来ないけど」
    「お構いなく」
    建物内にあった客室らしき部屋にて僕達三人は腰掛け、その正面にアイリスさんが座る。

    「さてと……じゃあお話ししよっか。私の弟、カキツバタのお友達の皆さん」

    「……!!」
    弟、というワードに今日一番に吃驚したけれど。

    どうあれあの人の行方に近づけるかもと、僕は緊張しながら質問を始めた。
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