矢張り母の教えは偉大なのだと、後に理解した。今でも、忘れられない言葉がある。
母さんと一緒に買い物をした帰り。
そこには、ダンボールの中で、にゃあにゃあと鳴き続ける、猫がいた。
寂しいと、怖いと、そう言っているようにも感じて。
連れて帰りたいと、そう言ったオレに。
母さんは、悲しそうに首を振った。
汚れ方からしても、かなり長時間外にいた猫。
恐らくノミが沢山いるだろうし、もし連れて帰ったら、咲希の病気が悪化してしまうかもしれない、と。
まだ子供だったから、難しい話ではあったけれど。
それでも、できるだけわかりやすく、噛み砕いて説明してくれた母さんの甲斐もあって
オレは、その猫を連れて帰ることを諦めた。
ごめん、と何度も言いながら、泣きながら帰るオレに。
母さんは、優しく手を握って、言ってくれた。
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