その正体は指先の違和感。ズキズキとした鈍い痛みが、怪我をなかなか忘れさせてはくれない。目を凝らして見れば、うっすらと浮かぶ傷口が線を描いていた。紙で切るとなかなか傷は塞がらない。きっと数日は違和感が残るだろう。
教室での出来事を思い出して、頭をふるふると振った。事もあろうにその指先を口に含んだ、血の滴る指を躊躇いもなく舐め取った同級生の、ショー仲間の非常識。
「一体なんなんだ」
ぽつり溢れる。当然返事はない。ここには誰もいない。類はいない。
あいつは時折オレをただ眺めていることがある。お前は知っているのか、どんな顔でオレを見ているのかを。お前はきちんと、気付いているのか。
それは遠目に寧々とえむを見ている顔に似ている。でもそうではない。似ているけれど、違うのだ。彼女たちへ向けられているのが[[rb:愛 > いつく]]しみだというのは疑いようもない。オレが咲希に向けているものと似たものだろうと、それくらいはわかる。
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