アダリュ+ルシアダ 何もない真っ白な空間に、仮面をつけたリュートが立っていた。私は彼女のもとに駆け寄る。もうずっと会えていなかった。
「リュート!」
私は地獄でどれ程酷い目に合ったか話そうとしたが、喉仏に剣をつき刺されそうになってできなかった。リュートを見ると、彼女はいつの間にか仮面を外していて、目には涙を浮かべていた。
「地獄に堕ちた天使は、殺さなければなりません。たとえ、ボスでも」
剣を握る手は震えていた。鋭利な剣に弱々しいリュートはミスマッチだ。私は彼女から剣を奪い取ると、自分の首元に近づける。そして、一思いに血をぶち撒けた。辺り一面が金色に染まる。意識がふっと消え去っていった。彼女がそのとき、どんな顔をしていたかは見えなかった。
真っ暗な部屋で目が覚めた。体中が痛くて起き上がると、床の上にいることに気がつく。ベッドから落ちてしまったようだ。のそのそとベッドに戻って寝転ぶ。そこには小さな体を大きく広げたルシファーが眠っていた。なるほど、彼のせいで私はおちてしまったのか。
不思議と怒りは湧いてこない。むしろ、彼に愛おしさすら感じる。眠気のせいで頭が正気じゃないのだろう。まあ、いいか。私はルシファーの細い腕を胸に抱いて目を閉じる。眠る直前、誰かに頭を撫でられた気がした。