Take my hand 早く大人になりたかった。
大人になれば、自分の好きなところに行って、好きなことができると、信じていたから。
先に貰われていく、歳の近い友達。新しい家族に不安もあるけれど、みんな嬉しそうな顔をして、きっと手紙を書くからと言って別れた。最初のうちは届いた手紙も、ぱったりと来なくなって、また、誰かが新しい家族に手を引かれていく。
俺の番は、やってこない。
誰か、この手を引いてくれる人は、いないのかな。
そう思うのは、すごく、悲しくて、寂しくて。だから、そういう気持ちは出来るだけ、奥底に沈めていた。
早く大人になりたかった。そんな悲しい気持ちで、誰かを待っているだけなんて、もう嫌だったから。
目を覚ますと、うっすらと涙が浮かんでいた。なんだか、久しぶりに昔のことを思い出した気がする。天井は既に見慣れてきた屋敷のものだ。それをぼんやりと眺めていた。遠い昔のことのようで、つい、この間のことのような夢だ。胸の奥がぽっかりと空になったようで、大きく息を吐いた。
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