薄暗いステージの上で、目も眩むような眩しいスポットライトを浴びている。全身はジリジリとサウナのように熱いのに、身体の内側を巡る血液だけはひんやりと冷たい気がする。この妙な冷たさはいつまで経っても慣れないし、小鹿の様に震える足は治まる気配すらなくて情けない気持ちでいっぱいだ。それなのに、何度もこのステージの上に来てしまうのはなぜなのだろう。
エンターテインメントに溢れる街として若者に親しまれるイエローウエストアイランド。賑やかなカジノや遊園地などがある中心部から少し逸れた所に小さなライブ会場があり、グレイはそのステージの上でギターを抱え、マイクの前でスポットライトを浴びていた。
観客入場数は五十人程が限界だとスタッフから聞いていたが、明らかにキャパオーバーであろう人達がギュウギュウとすし詰め状態にされている。まるで満員電車の中のよう、苦しくて不快な筈なのに、グレイに期待の眼差しを向けている。はやく、はやく、と訴える目は輝いていて、ボールを前にする愛犬のバデイとそっくりだ。
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