2022.03.22
目覚めるのは億劫だ。誰とも話すことはないし、わざわざ水に降りて世界を見て回ってやる気力もない。もう、守るものなどとっくにない。そんな力も持っていない。
どうせ、無為な時間を過ごすだけだ。そう思っているのに体は目覚めたがる。眠りなんか、いらなかった。目覚めの瞬間も必要ないのに。閉じるのをやめたまぶたが空気をゆっくりと受け入れる。どうせ、終われないのなら。諦めて、遠い、遠い、かつてめぐった海を眺めることにした。
小さなプロメテウスに重力などあってないようなものだ。閉じ込められていた、岩戸を模した赤い石を蹴って浮かび上がる。僕の帰る場所などとっくに失った、いつかなら故郷と呼べたかもしれない星が、はるか向こうで青々ときらめいている。
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