『昼寝と猫』 春の終わりがけ、まだ、太陽の光が穏やかに降り注ぐ日。面倒な任務もなく、かといって他にやることもないブラッドリーは、暇に任せて魔法舎のすぐ裏にある森の木陰で寝ていた。そこへ、かすかに草を踏みしめる音がなる。目を閉じたまま少しずつ近づいてく足音の気配を探れば見知ったもので、警戒するものではない。むしろ安心する気配だ。だが、いつもに比べて音も小さく、近づくまでの時間もかかっているのが気にかかり、まだ重い瞼をゆっくりと持ち上げれば、少し先にいたのは水色の猫だった。
「あ? ネロ……? なんで猫なんかになってんだよ」
そう問えば、猫は違うとでも言うように「ナァ!」と険しく鳴いて毛を逆立てた。
――なんだよ。俺様相手に隠せるわけねぇじゃねぇか。だいたい名前を呼んで怒るなんて、本人だと言っているようなものだろう。
1910